北川景子「大女優への道」

日曜日に観に行ったよ、「死刑台のエベレータ」*1。場所は錦糸町、「花のあと」と同じ映画館だ。ここで、後の展開のために錦糸町の説明をしておく。秋葉原から総武線で千葉方面に3つ目。昔は駅前に「楽天地」と呼ばれる映画街があった。ここに東宝東映、松竹など各社の映画館が並んでいてそれはそれは賑わっていた。ところが映画が斜陽になり、錦糸町自体も都心の求心力に負けて落ちぶれた。映画館は取り壊され駅前のビルの中に納められた。これが現在の「楽天地シネマズ」。とりあえず錦糸町の映画館は存続したわけだ。ところが駅から北に5分くらい歩いたところ、錦糸公園の向こうのセイコーの跡地にショッピングセンターができて、そこの4階にTOHOシネマズができた。こっちのが上映される映画が多く、PCや携帯から座席の予約ができて、会費無料の会員になると6回観ると1回がタダとか特典が多い。さらに館内がきれいで椅子の座り心地もいい。食事とショッピングが同じ場所でできる。こうして錦糸町の映画館と言えば駅前の楽天シネマズより北側のTOHOシネマズになったわけだ。ところが「花のあと」といい今回の死刑エレといい、北川景子が出演する配給先が少ない映画はTOHOシネマズではなく楽天地シネマズで上映される。
日曜日の朝の10時30分、映画館に入った。花のあとは老人ばかりだったが、今回は若い人が多いだろう。老人が多い理由なんかなにもない...

  老人ばかりだ...

なぜだ、なぜ老人ばかりなんだ。若いときに「死刑台のエレベータ」を観た人が昔を懐かしんで観に来たとか。やめろ、青春の思いでは大切にするんだ。ぜったいに失望する。それとも「花のあと」で北川景子にシルバー世代のファンが増えたとか。それならうれしいが、この映画は北川景子が主演というわけではないし。そうか、若い人はみんなTOHOシネマズに行く。この映画館は

  仮面ライダーだろうがドラエモンだろうが観客は老人ばかりなのだ

うう、すごいところに足を踏み入れてしまった。この中では私なんかめちゃめちゃヤングだ。猛暑から一転して肌寒い陽気になったから、この館内の老人で年を越えられる人が何人いるのか*2
さて、映画が始まると5分もしないうちに北川景子が出てくる。北川景子の役はちょっとオツムの弱い美容師。では北川景子にとってすごく残念な役だったのか。ちがう。

  北川景子の演技はここ数回の映画の中で出色の出来だ

すごくイイ。物事を深く考えない人。こういう人はよくいるよ。なぜ自分が主演の映画でこういう演技ができないのだ。そうなのだ、

  北川景子は演じる人物のキャラが素の自分と離れているほど良い演技ができる

このブログでたまに取り上げる堀越組、華子様・小田あさ美西田奈津美さんが感情の振幅が大きくなるにしたがって演技が怪しくなってくるのと逆。彼女たちの演技を自動車とすれば、北川景子は自転車。まっすぐにゆっくりと走るほど不安定になってくる。この高速安定性こそ北川景子の持ち味。別に悪いことではない。そういう役者はたくさんいる。だからそういう役をもらえれば北川景子はスクリーンで輝く。
さて、北川景子演じるオツムがアレな美容師、変な役かと言うとこの映画ではそうでもない。なぜなら

  登場人物がみんな狂っているので、北川景子がいちばんまともな人

なのだ。だから北川景子が出てくるとほっとする。原作の映画、昔に1回だけテレビで観ただけなので内容はまったく覚えてない。全体のプロットは原作にそって部分的に現代風に変えているのだろうが、今回の映画の致命的な点は

  主人公がやろうとした犯罪は、現代ではたとえエレベータに閉じ込められなくても完全犯罪にならなかった

ことであろう。ミステリーファンならずともそこの無理さがわかってしまうので、主人公がすごく手間をかけて殺人を犯すことの必然性が理解できない。この部分は大胆に原作から変更するべきであった。またこの映画は主人公の犯罪と、北川景子のボーイフレンドの犯罪が本人たちの知らないところで絡み合って意外な方向に展開する面白さを描いたものだが、エレベータに閉じ込められる主人公に対して、ボーイフレンド側の行動がアクティブすぎて主人公に感情移入ができないのも残念。そのため、主役の阿部寛や吉瀬なんとかに比べ、チョイ役であるはずの北川景子が結果的にかなり目立つことになり、彼女にとって思った以上においしい役だったのではないか。
最後の方で北川景子十八番の顔面崩壊も観られるし、なにより

  北川景子のゲロ

が観られる点でも、北川景子ファンには必見の映画である。繰り返すが、今回の北川景子の演技はすごくイイ。すぐに映画館に行くべし!

*1:わざとだからね

*2:失礼な