多岐川華子「ママはニューハーフ」

華子様がゲストキャラの最終日。前日は思い切り我が儘で嫌な女だった華子様。この番組を見ている人の95%は華子様を見るのは初めてだろうから、このまま終わったら華子様の印象が悪すぎる。どうなる最終日。
ニューハーフとキャバ嬢、お互いの名誉をかけて売り上げ対決をすることになった...○| ̄L...いいんです、華子様がされるならどんな対決でも。熱々あんかけ対決でも、ゴボウしばき合い対決でも応援します。残念なのが、番組的に華子様の負けが最初から決まっている点です。このドラマの公式サイト、あさみんのブログにテレビ東京のこの時間帯のドラマで過去最高のページビューだと書いてあった。掲示板を読むと視聴者の熱いエールが書いてある。いままでに見たドラマでいちばん面白かったとか、ゴールデンでも行けるとか。たしかによくできている。ドラマに限らずフィクションとは4通りの作り方があると思うのだよ。舞台設定と物語の進行のそれぞれを、日常にするか非日常にするか。
日常の舞台設定で日常の物語が進行し、なんらかのイベントなり小さな事件を一つ二つ入れる。俗に言うサザエさん型のホームドラマだね。これは出演者の魅力で引っ張らないと1クールを持たせるのはたいへんだ。これとは逆に、非日常の舞台設定に、非日常の物語が進行する。SFとかファンタジーはこれだね。活劇タイプの時代劇や、警察とか病院を舞台にした作品なんかもここに入る。これは作りやすいが予算がかかる。テレビ東京のこの時間帯で大人向きのものを作るのは無理だね。つぎに日常の舞台設定に、非日常的な物語が進行する。いまのテレビドラマではこれがいちばん多い。ミステリー、サスペンス、ホラー、スポ根はこの範疇に属する。よい脚本さえあればキャストにお金をかけなくても面白いドラマは作れる。
で、ママニューなんだが、これは非日常の舞台設定に、日常の物語が進行するドラマなんだな。元ガオレッドの主人公がニューハーフではなくて女手一つで子どもを育てる女性、彼女が働く職場をニューハーフパブではなくてラーメン屋にすればただのホームドラマなんだ。舞台設定を特殊にしてあるので、そこに使い古されたホームドラマのフォーマットを持ち込んでもいちいち新鮮に感じる。いままでのドラマでは女性がぶち当たっていた壁がニューハーフの男の前に立ちはだかる。それを助けるのが主人公に理解のある女将さんじゃなくて、ごっついオカマのママや不気味な同僚。そもそも主人公たちの存在自体が最初からハンディがあるので、ふつうのドラマでは当たり前ことが、周囲との溝を埋めないと実現し得ない障害になって、それを実現したことが成功物語と美談にできる。陳腐なセリフでも「おいおい、おまえがそれを言うかよ」って、笑いとペーソスがある。うまい、これはアイデア勝ちだ。マンガのはぐれ雲は読んだことがあると思うが、あれは舞台を江戸時代にしているが、そこで教育とか家族とか現代的な問題を持ち込んで上質の物語にしているでしょ。いまの父親だったら、こんな人生送れねえよとか、こんなクサいセリフ言えねえよという物語としてのハードルを、舞台を変えることで突破している。
さて、最終話に戻る。華子様はただのキャバ嬢ではなくて、客を楽しませようというプロ意識、客を気遣うホスピタリティに、回りの見る目が変わる。華子様優勢のまま時間切れ寸前になって、それを上回る主人公のハートに大逆転というのはいかにも。素直に負けを認め、勝負を観に来ていた父親とも和解し、反目していたニューハーフたちとも仲直りするのは低予算の昼ドラ。最後は優しい華子様に戻って主人公の息子に別れをつげ去っていく。これで華子様を嫌ったまま番組を見終えた視聴者は少ないはず。
よかったよかった、やっぱ華子様はついてますよ。いいドラマに出られました。さらに華子様の能力にキャバ嬢が付け加わりました。

  華子様の七つの能力


  1.大金持ち

  2.フラフープが得意

  3.何時間でもボーっとしていられる

  4.テレビで「すっぴん」になれる

  5.胸は小さいがお尻はふつう

  6.タバスコごはんを食べられる

  7.キャバ嬢役が十八番

この七つの能力で、一日も早く、お母様のような大女優になってください