北の国から1998−名物にうまいものあり(前編)

久しぶりだなこのシリーズ。って、よくみたら10年前じゃん。ちょうど10年前のいまごろだよ、常務に呼ばれて北海道に転勤って言われたの。このシリーズ、自分ではけっこう気に入ってて、東京生まれの東京育ちの転勤者から見た北海道ってことでかなり貴重な資料だと思う(自画自賛)。これから北海道に引っ越しをする人や北海道に興味を持った人が読んでくれたらうれしい。
「名物にうまいものなし」って言葉があるでしょ。「名物ってことですごく期待して食べるとたいしておいしくない」とか「その土地の人は名物と言ってるけど、この程度の味なら自分が住んでいるところにもある」のような意味だと思う。とくに大量生産可能なものについては真実を突いている言葉だと思う。なぜなら、そんなにおいしいものなら全国で販売しようとするだろうし、その土地の人がしなくても誰かがするから、いずれにしても名物ではなくなってしまう。そこでだけ販売されているということは全国区にできない理由があるわけだ。
とくにダメなのが大都市だと思う。出張ばかりしていたころ、名古屋や大阪に行くと家に買っていくおみやげがなくて困った。同じことが東京にも言えると思う。もちろん、どこそこのなになにはここでしか食べられない、というものはあるよ。だが少なくとも名古屋駅や関西新空港で売ってるものにすごくおいしいものなんてないでしょ。その点、北海道の新千歳空港の充実ぶりはすごい。お菓子系、おかず系ともおみやげのワンダーランド、食のテーマパーク。

  空港でこんだけおいしいものが売ってるんだから、

  街中に行くともっとおいしいおみやげがあるに違いない

と思うでしょ。ないんだな、これが。そこが大都市との違いだ。要するに内需より外需で成り立っている土地。観光客にどれだけ買ってもらうかが勝負なので、六花亭もロイズも必死で新商品を開発している。だが安く手に入る北海道産のバターやミルクをふんだんに使っているので、全国規模の流通ルートに乗せるほどの大量生産ができないし、会社自体は大きくないので全国に打って出るほどの資本力もない。その結果、新千歳空港をはじめ北海道の土産物屋にしか置いてない上質のお菓子があるわけだ。
北海道の子どもはいいな、あんなおいしいお菓子が食べられてと思うだろうが、北海道民はあんな高いお菓子はめったに食わない。その代わり、かっぱえびせんミスタードーナッツをこよなく愛している。だいたい、子どもがよその家に遊びに行くと、どこの家でもかっぱえびせんが出てくるのなんて北海道くらいだよ。あとミスタードーナッツは一度に買う一人あたりの個数が半端でない。どちらも向こうの人は気がついてないけど、私から見るとジンギスカンと並んで北海道民のソールフードになっている。
なんでこんな話をしたかというと、女房がデパートの北海道物産展で「わかさいも」を買ってきたのだよ。明日はわかさいもの話ね
(つづく)