セーラーマーズ「火野レイの逆襲」(中編)

昨日は北川景子の話しで終わってしまったが、実写版において火野レイとは何だったかを振り返ってみよう。実写版には原作やアニメにはなかったオリジナルの設定やストーリーが多々ある。

     (1) 友達がいない眼鏡っ子水野亜美

     (2) 前半はずっと髭武者、じゃなくて影武者だった高飛車の芸能人ヴィーナス

     (3) 後半はずっと前世にこだわり続けた高飛車の重病人ヴィーナス*1

     (4) セーラー戦士は戦士として覚醒するとパワーアップする

     (5) ただドンくさいだけの月野うさぎ

どれも実写版の醍醐味、小林靖子の叡智が生んだ果実である。なんと火野レイは、このすべてにおいて重要な役割を果たしているのだ。
【(1)友達がいない眼鏡っ子水野亜美】act3を見ると、act2の亜美同様にレイもまた孤独な少女であることを視聴者は知る。それをつらいと思う孤独な亜美と、自分から人を拒む孤高のレイの違いだけである。act6のまこと登場回までを見ると、うさぎと他の3人の関係が映画版「セーラームーンR」の設定に似ているのに気づく。だが「うさぎが孤独な少女の心を癒やす」路線はここまでで、以降にはまったく登場しない。むしろ、亜美がうさぎに寄せる思いをうさぎは裏切り続け、うさぎは亜美にとってのトラブルメーカーになる。それを陰から見守り心配するのがレイである。よく思い出して欲しい。act5でもact16でも亜美の心を救ったのは間接・直接の違いはあるがレイなのだ。
【(2)(3)美奈子=ヴィーナスの設定】act11、12での初美奈子メイン回はアイドル美奈子とうさぎのコンタクトからセーラーV=プリンセス発現までを描いている。次の美奈子メイン回act17、18では美奈子=セーラーヴィーナスが明らかになる。ここまでは原作・アニメの変形であるが、この後は

     -余命半年

     -前世への異常なまでのこだわりと使命感

     -高飛車

     -人間離れしたキック力*2

とオリジナル設定が次々と提示されシリーズ後半に続く。愛野美奈子の正体をただ一人知り、以降、美奈子がその短い生を全うするまでコンタクトをするのがレイである。なぜレイなのか。戦士の中でただ一人、アイドル美奈子に興味がないからである。その伏線は初登場回のact3ですでに提示されている。前世で決められた運命に殉じようとする美奈子の気持ちは視聴者には理解できない。視聴者を代表して繰り返し反論を唱える者がいて、はじめて美奈子の心情が受け入れられるのだ。美奈子に対するよけいな先入観や敬愛がなく、徹底的に合理的で冷静なアンチ前世派としてレイが配置されている。また美奈子も自分を芸能人として見ない唯一の友人として、また自分が亡き後の戦いを託すリーダーとしてレイをいじめいびるのである(ヲイ)。余談だが、美奈子は最後まで、遺書の中でまでレイのことを「マーズ」としか呼ばなかったが、SpecialActの中で初めて名前で呼んだのを気づかれただろうか。みんなで剣を岩から抜くシーンである。

     「レイならいるわ。心は私たちと一緒よ」

別にどうでもいいことだが、ちょっとうれしかった。
(つづく)

*1:私はヴィーナスが嫌いなのではない。むしろ実写版では一番のお気に入りなのだ

*2:これはどうでもいいだろ。SpecialActを見ると、このキック力が戦士の力ではなくて美奈子の素の能力であるのがわかる