act28とSpecialAct(後編)

SpecialActは、本放送の2倍以上の尺、オリジナルストーリー、レギュラー総出演であるにもかかわらず、本編以上の駆け足で、いまいち充足感が得られなかったというのが前編の趣旨であった。もちろん、これはact28などの傑作回と比べてのことであって、SpecialActがつまらなかったというのではない。年末に書いた最終回についての考察で述べたとおり、地球を滅ぼしてまで手に入れたセーラー戦士たちの未来の姿であり、実写版の真の最終回である。
act28は30分で自己完結している話ではなく、それまでの数々の伏線が畳まれている回である。

     ムーン倒れる←act27

     亜美の帰還←act20、21、22、25、27

     他のメンバーへの亜美の不信←act17、19、20

     美奈子へのコンタクト←act11、17、18、19、20、23

     ネフライトの恩返し←act23、2X*1

     青いガキの正体←act27

     タンバリンの使い方←act26

そしてact28と対になる回がact17である。ここでは

     愛野美奈子セーラージュピターとして火野レイの前に現われる

     月野うさぎ地場衛を意識すると同時に恋敵である陽菜が現われる

の2つのイベントが起こり、これを契機にして戦士達の迷走が始まり水野亜美ダーキュリー化につながっていく。つまりact28は、act17から始まる第2部の完結編であり11話分の物語があって成り立つ話なのだ。これと1話限りの特別編を比べるべきではない。
では特別編は本編にかなわないかというとそうでもない。ライダーやレンジャーの映画版をわざわざ引き合いに出すまでもなく、アニメ「セーラームーンR」の映画版のような傑作もある。SpecialActは4年後という本編とまったく異なる舞台設定であるため、5人のいまの心情や人生観がわからないので感情移入しにくいのが難点になっている。また普通の特撮物は、映画などの特別編では本編以上に強大な敵を出せばスペシャルになる。ところが実写版セーラームーンではもともと敵を倒すことに物語の主眼を置いてないので、黒木ミオが変身した巨大なCG妖魔を倒しても、それだけではカタルシスが得られないのだ。この2点において60分で特別編を作るのはなかなか難しい作業だと言える。
もちろん、本編の真の最終回として見れば十分に満足できる内容である。とくにラストのバイクのシーンは実写版の大団円としてふさわしい、美しくもほろ苦い終わり方であり、私はあのチャプターだけでも20回は見た*2

*1:PCに取り込んでないのですぐに確かめられない。ダーキュリーがマントをあげる回です

*2:ヲイ