最終回の意味(その4−完結編)

最終回にセーラームーンはなぜクイーンベリルと戦わなかったのか。ボスキャラはなぜプリムーンであり、クイーンベリルではなかったのか。
そもそも実写版セーラームーンベリルや妖魔と戦う物語ではない。なぜなら視聴者がベリルのことを殺したいくらいに憎いと思えるほど、ベリルの明示的な被害者がいない。*1実写版は、セーラー戦士5人と衛および四天王の10人*2で完結している物語なのだ。コンプレックスや欠点を持った登場人物が自分自身と正面から向き合い、仲間との交流や数々の試練を乗り越えて成長し、自分自身でそれを克服する物語だ。各自が解決しなければならない課題は、初登場の回に提示されている。

     火野レイ  act3→act23&34(友達や家族の絆は簡単に壊れないと信じる)

     水野亜美  act2→act16(母親以外の他人と人間関係を構築する)

     木野まこと act6→act46(一人ではないことを認識する)

     愛野美奈子 act7→act46(前世の呪縛から自分を解き放つ)

     月野うさぎ act1→act49(???)

前世の宿命を背負った5人の少女が、特殊な能力を持ったヒロインとして正義のために悪と戦い続けることがこの物語の完結ではない。学問に仕事に恋に自分の人生を歩むことが正しい完結である。なぜなら彼女たちは目の前に現われた悪と戦っているだけで正義を守る使命感は持たない迎撃型のヒロインだからだ。*3そのヒロイン達の最終回はSpecialActが示す彼女たちそれぞれの未来に向かう最終回でなければならない。それにはリセットしかないのだ。それも10人の内の誰かの手によって。それは月野うさぎ以外にはありえない。
アニメ版のリセットは、物語的には普通の女の子に戻りたいといううさぎの心に銀水晶が反応して、また構成的は最終決戦で死んだセーラー戦士を蘇らせるために時間を1年間巻き戻す。その意味では非自発的なリセットいやリワインド(巻き戻し)だ。ところが実写版はプリムーンが滅ぼした地球を、うさぎが自発的にリセットいやリストラクチャリング(再構成)する。アニメ版と実写版は同じリセットでも実はまったく違う。
実写版美少女戦士セーラームーンでの月野うさぎの使命は、クイーンベリルを倒すことでも、メタリアから地球を守ることでもない。ましてや衛と添い遂げることでもない。アニメ版ほど強力な力を与えられず、*4アニメ版ほど仲間からの絶大の信頼も得られず、見方によっては主役ですらない狂言回しとして*5亜美・レイ・まこと・美奈子・衛と四天王の物語を脇から見守るしかなかった実写版の月野うさぎ。彼女が担っている使命は、プリンセスセーラームーンの宿主として仲間が背負った前世の宿命を断ち切り、セーラー戦士の物語を無かったことにして、4人を新しい未来に旅立たせることだったのだ。それがどんな手段であっても。たとえ地球をいったん滅ぼしてでも...*6

*1:12/27「被害者の物語」参照

*2:黒木ミオ、陽菜は入れない。あとセーラールナも

*3:12/18「攻撃型ヒーローと迎撃型ヒーロー」参照

*4:12/24「セーラームーンでなくても倒せる妖魔」参照

*5:12/17「うさぎの役割」参照

*6:いいのか、こんな結論で。反論はしないでください。論戦できる根拠と自信はまったくありません