act16回想(その6)−大阪なるの暁光(後編)

以前、戦隊物としての実写版セーラームーンの物語はメタリア妖魔を倒したact46が実質的な最終回であると述べた*1。そして、そこに至る盛り上げ方が弱いのでここがシリーズのクライマックスであると視聴者はわからず、本来はエピローグであるラスト3話がシリーズ構成的に支離滅裂のような印象を受けてしまう。act42でメタリア妖魔のために廃人になってしまった大阪なるを元に戻す。せめて月野うさぎだけでもそれをモチベーションにしてact43以降の回を行動してくれたら、番組終盤はもっと盛り上がったかもしれない。もともと顔の見える被害者がいない物語である実写版において*2、大阪なるは最大の被害者だったはずである。
そして一瞬ではあったがもう一人の被害者が亀吉である。月野うさぎに対する大阪なる、木野まことに対する亀吉。彼は亀に対する偏愛を除けば陰りのない常識的な青年である。なると同様にエナジーを失って倒れた亀吉を見て、まことが自分にとって亀吉がいかに大切な人だったかを知るシーンは名場面である。ここでセーラージュピターがメタリア妖魔との戦いにおいて重要な役割を果たすとこのシーンが生きてくるが、セーラーヴィーナスに見せ場を作らなければならないのでジュピターは良いところがない。こうして見るとact46は詰め込みすぎ、エピソードが未消化に終わっている感が強い。シリーズ構成の問題か、脚本の問題か、監督の問題か。いずれにしても30分の制限はきつい。
3回に渡って大阪なるを振り返ってみた。描かれ方は不十分であったが、うさぎの同級生の一人というだけでなくシリーズ終盤で重要な役割を担っているのがわかる。なお、番組開始当初、まだ演技に慣れていないセーラー戦士と比較して河辺千恵子の演技がもっとも安定感があった。芸歴の長さもさることながら、役が本人にもっとも近いのもやりやすいのだろう。その意味では彼女たちの次の演技が非常に楽しみである。レギュラー一番乗りの安座間美優もがんばれ。

*1:2月18日『四天王「収束する物語」(後編)』参照

*2:12月27日『被害者の物語』参照