特殊設定ミステリー

本の雑誌の最新刊。

特集が「ミステリー新時代到来!」。映画化された「屍人荘の殺人」の今村昌弘、「六人の嘘つきな大学生」の浅倉秋成など最近デビューした作家の特徴が

エラリー・クイーンアガサ・クリスティといった古典名作から綾辻行人以降の新本格まで読むというようなミステリの系統だった読書を経由せず、ライトノベルや漫画、アニメといったミステリ以外のメディアから無意識のうちに謎解きの技巧を習得した

という点が一つ。もう一つが

”特殊設定ミステリー”と呼ばれるサブジャンルの隆盛である。これは作中に魔法や超常現象といった非現実的な要素を取り入れたミステリのことを指す

そうか、特殊設定ミステリーと呼ぶのか。私が何度か書いている「非現実的な要素を一つだけ入れて、あとは現実の中で論理的に物語が進行し、探偵役はその要素を踏まえて論理的に推理を展開をする」のことだ。「本の雑誌」はあくまでも読者の側に立った雑誌なので、この2つがけしからんとは言ってない。むしろ新しいルートでミステリー作家になる人が増えること、新しいジャンルが増えることを歓迎している。念のために書いておくが、この非現実性はあくまで要素を一つか二つ取り入れるだけで、物語は現実の世界で進行するのだからね。非現実的な世界で進行するのはSFやホラーになる。私のブログで以降「特殊設定」と書いてあったらこれのことを指す。いちいち特殊設定とはなにかは説明しないので「特殊女優」同様によろしく。

人と人とのコミュニケーションで大事なのがお互いが使う用語の定義をきっちり定めておくこと。「Aに賛成する」、「Aは反対だ」と議論しているのに、じつは賛成しているAと反対しているAは微妙に違うので、Aに賛成しながらAに反対することが成立してしまう。あるいは「A案で行きたい」、「いやB案のが良い」と議論をしているのに、A案とB案は表現が違うだけで同じ内容とか。最近話題になっているのが「AV新法」。私もまだ完全に理解してないので詳述は避けるが、これも用語がまずいと思う。まずは「適正AV」というものがある。定義は

「適正AV」とは、AV人権倫理機構(HP:https://avjinken.jp/)が提唱する「女優の人権に配慮した過程を経て制作され、正規の審査団体の審査を受けたAV作品」のことをいいます。(作品の表現内容に関して指すものではありません。)
AV人権倫理機構では、女優への人権侵害が起こりうる部分として「女優のプロダクション面接、登録~出演決定~撮影」といった過程を重要視しています。

AVを見たことがある人ならわかると思うが最初にこのマークが出てくるでしょ。

   
これがそう。AVに興味がない人やAVなんかほとんど見ないという人にとってのAVとは適正AVのこと。この適正AVでは出演強要などの問題はゼロとは言わないが、ほとんど発生しない。発生しようがないほど出演者への事前の確認や契約がガチガチに定められている。もちろん本人が深く考えずに出演して、あとから「私は強要された」と訴えるケースはある。制作側は所定の確認や手続きを踏んでいるので避けようがない。また出演者が特殊女優を引退し、本人が希望すれば一定期間後にダウンロードサイトから作品を消すことも最近は行なわれている。じつはAV新法は適正AVを問題視していない。それ以外の作品(いったん非適正AVと呼ぶ)に適正AVと同じ契約を課す。それをしない作品を排除するのが目的なのである。この非適正AVってなんだかを説明しないでAV新法の説明をするから誤解が生まれている。個人(バックに法人があるケースもあり)が作った作品をFC2などのマーケットプレイスで販売しているのが非適正AV。当然、出演者への確認や契約などないし、適正AVでやっているような病気の検査もない。なので出演の強要があったかもしれないし、非公開にするような出演者からの要求も通らない。この非適正AVを正しい契約の元で販売する(=結果的に適正AVにする)か、それをしない作品を排除するのがAV新法なのである。だが上にも書いたように、ほとんどの人には「AV=適正AV」なので誤解と混乱を招いているわけだ。ただし法制化にあたって業界の意見をほとんど聞いてないので、制作の現場において非現実的な条項があるようで苦情は出ているらしい。脱法ハーブを取り締まるのに「ハーブ新法」って名前をつけてミントやカモミールも対象になるのかと誤解させるようなものか。ミステリーからぜんぜん違う話になってしまったね。