春のビデオまつり「ボーダーライン」「子供はわかってあげない」

「キネマの神様」を抜き出して1回の記事にしてしまったので、残ったのは地味な映画だ。

ボーダーライン
【1,700円】主役はクワイエット・プレイスの人。レビューを見ると「主人公が役立たずでイライラする」、「主人公は文句ばかり言ってCIAの足を引っ張っている」と酷評されているが、それは違う、それこそこの映画のテーマだと私は思った。麻薬組織を弱体化させるにはメキシコにいるボスを捕らえるしかない。CIAの作戦に派遣されたFBIの主人公。アメリカ映画を見るとFBIもCIAも銃をぷっぱなしているが、この映画を見ると2つの組織の違いがよくわかる。私の主観の乱暴な言い方になるが、FBIは警察、CIAは軍隊。FBIは国内、CIAは海外。FBIのモットーは法の遵守、CIAは安全保障。よってFBIは市民がいる場所で銃撃戦はしない。FBIは容疑者の拷問はしない。サラリーマン時代、文化の違う会社と一緒に仕事をするのは本当につらかった。CIAに派遣された主人公にひたすら同情する2時間。

お嬢ちゃん

お嬢ちゃん

  • 萩原みのり
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お嬢ちゃん
【1,200円】主演は萩原みのり。表参道合唱部のメガネの子。芳根京子森川葵に遅れは取ったが映画の主演をやったりテレビドラマにも出ているようで雰囲気に実年齢が追いついた感じ。母親が死んだ後、クズ親父と一緒に住むことを余儀なくされた。そのクズ親父が死んで祖母と暮らしているが、もう自分以外の誰も信じられない、女を所有物のように扱う男も、男に媚びる女も許せない、ひたすら我が道を行く少女になっていた...これ、すごく変な映画だよ。主人公の物語とまったく関係ないサイドストーリーが半分近くを占める。一つのエピソードが5分くらいで主人公とまったく絡まない。そのエピソードの登場人物は以降には出てこない。主人公にとって生きづらい世の中であることを示しているのかな。

プロムナイト
【1,200円】1980年の作品。プロットはシリーズ化もされている「ラストサマー」と同じで高校生が過去の罪で復讐される話。いちばん残念な点が、プロム(卒業まじかのパーティーらしい)の夜に全員が殺されるので、残った人が「あれが原因だ、つぎは私だ」と怯えないこと。いまから40年前なのでまだ恐怖演出が確立していなかったのだと思う。いろいろあっさりした映画。

子供はわかってあげない
【1,900円】この映画は昨年の封切りで、見たい映画リストに入れてたんだよね。スケジュールが合わなくて別の映画を見たんだが、見るべきはこれだったか! 主演が上白石妹、その両親が古舘寛治斉藤由貴、小さいころに別れた実の父親が豊川悦司。同じアニメが好きで意気投合し主人公を手伝ってくれる男子生徒が「町田くんの世界」の人。彼の兄で父親探しを引き受けたのがオカマの千葉雄大。配役が個性的すぎる、クセが強すぎる。原作はコミックらしいが、タイトルとポスターから子どもと大人の断絶を描くシリアスな物語かと思ったら全然ちがった。実の父親に会ってみたいと思った少女が両親には合宿と嘘をついて海辺の町に行く...登場人物がみんな少し変だが、それが押しつけがましいギャグではなく、ずれたリアクションと変な間でずっとクスクス笑って見られる。なにより個性的な俳優を生かす緻密な脚本と演出と映像。それでいてベースにあるのは校舎、プール、海辺の町で繰り広げられるキラキラした高校生の夏休み。すごい完成度の作品だが、この監督の次回作はさかなクンの半生記で、さかなクンを演じるのはなぜか女優ののんちゃん。大丈夫なのか?