映画化はかまわないがテレビドラマにはしないで欲しい

先週に読んだ本。この作者、デビュー作から読んでいて、過去の記事では私はこの人のことをけっこうボロクソに書いていた。直木賞を取ったときは「なんでこの人が?」と思ったが、そこからがすごかった。一作ごとに「あれ、この人はこんなにうまかったっけ?」と思うほど成長と脱皮を繰り返し、いまでは日本を代表する作家と言ってもいいと思う。その辻村深月の最新作。あらすじを書いたらツイートの140字で十分なほどなのだが、話の運び方、登場人物の人物造形や心象風景の描き方。とにかくうまい。結末も予定調和といえばそうなのだが、むしろ「よかった、本当によかった。そうだよな、うんうん」とひねくれ者の私が思えるラスト。「本の雑誌 1月号」の2015年度ベスト10にも選ばれていた。「このミステリーがすごい」と違って、「本の雑誌」のベスト10はベストセラーになった本や賞を取った作品は選ばれない。過去に直木賞芥川賞を取った作家の本も基本的には外される。読書家の私でさえ、読んだことがあるのが1冊か2冊。本屋で見たことがあるのが4、5冊という、ほとんどの人には参考にならないベスト10なのだが、そこに直木賞作家で売れっ子の辻村深月が入るのがすごいことなのだ。
この作品、映像化もしやすい。むしろ映像化に向いている。だが、映画は良いがテレビは止めて欲しい。この作品は主人公が二人いる。前半と後半で主人公が代わり、後半には一人目の主人公は出てこない。それが物語の構成に重要なことなのだが、もしこれをテレビドラマにすると、一人目の主人公の役者が2ヶ月近く出演しないことになるだろ。それを所属事務所やスポンサーが許さないと思うんだ。そこで後半になっても毎回5分くらいは最初の主人公を出すように思う。それをやっちゃうとラストの感動が半減するのだよな...と書いちゃうとけっこうネタバレになっちゃうか。良かったら読んでみてくれたまえ