10月に読んだ本

ビジネス書によく出ているロジカルシンキングフレームワークとはちょっと違った、経済学的な思考法。ちょっと前に読んだ同じ著者の「ダメな議論」との共通点が多く、1ヶ月以上経ったいまではどっちがどっちだったかよくわからなくなった。こういう方面の話を知らない人は参考になると思う。


カールの降誕祭

カールの降誕祭

赤い刻印

赤い刻印

2冊まとめて。どちらも短編集では期待を裏切らない作家。今回も筋立て、文章とも実にいい。なぜ2冊まとめて紹介したかというと、どちらも薄い。ふつう短編集って6話とか8話とかもう少し貯めてから出版するものではないか? 3話とか4話で本を出されてもなんだかなあと。それでも人気作家だから買っちゃうんだよね。実にあざとい。


やや古めの作家を集めた密室ミステリーのアンソロジー。優れた密室トリックって、ようするに密室じゃないんだよね。


知的思考力の本質 (ソフトバンク新書)

知的思考力の本質 (ソフトバンク新書)

「リング」鈴木光司サイエンスライター竹内薫の対談集。この本の存在を知って読んでみようと思ったのだが、出版されたのがけっこう前で書店はもちろんBOOKOFFにも置いてない。Amazonで見たら在庫はないが、Amazonって古本も買えるでしょ。そのまま古本の方に行って送料を入れても定価より安く買える。こんなサービスがあったら書店も古本屋も商売が成り立たないだろ。ただ買う本が決まっているときはAmazonに勝てない。だが「ほら、こんな本もあるんですよ。どうですか? ちょっと手にとってパラパラと見てよかったら買ってください」は本屋でなければできない。週替わりで「宗教って結局なんだ?」「伸び盛り若手女流ミステリー」「読後感最悪、読めるもんなら読んでみろ」とコーナーを組んだら必ず本屋に行くし衝動買いしちゃうんだけどな。


違和感の正体 (新潮新書)

違和感の正体 (新潮新書)

メディアや自称知識人・専門家が語る正義は何かがおかしい。現代社会の諸問題について、時代の風雪を耐え抜いた偉大な思想家の考察を引用しながら違和感の正体を解明する好著。宗教を持たない日本人が善悪の基準にする「ものさし不在」、そして簡単には結論がでない事柄に対して思考や議論をすっとばして「処方箋を焦る社会」に警鐘を鳴らす。この手の本を読んでいつも思うのが、もやもやしたイメージはあるのだが、それをうまく言語化できない。そのイメージを的確に現わす言葉を持っている人がいて「そうそうそれだよそれ。俺が言いたかったのはそれだよ」と興奮する。


みかづき

みかづき

この人も辻村深月と同じで直木賞を取ったとき「え? もう直木賞? しかもこの作品で?」と思ったが、そのあとグングン上手になっていまや直木賞作家の名にまったく恥じない。やはり才能のある作家には早めに直木賞をあげて良いものを食わせるのが日本の文学界のためなのだと思う*1。親、子、孫の三代に渡る学習塾の話。それぞれ教育に対する向き合い方が違って、どれがベストというものではない。親のレールに乗らないで孫が始めた活動が、なんのことはない祖父が立ち上げたばかりの学習塾に非常に似ているという。文部科学省と学習塾との対立とか「ゆとり教育」の理想と蹉跌もこの本で初めて知った。分厚い本でビビるけど一気に読めるよ。


実話系怪談集だが、ふつう作者は淡々と語るのだが、このシリーズは題材は悪くないのだが、作者自身が大騒ぎしすぎで興ざめになるのが難点。

*1:食い物だけではないだろうけどな