3月に読んだ本

絶叫委員会 (ちくま文庫)

絶叫委員会 (ちくま文庫)

数年前、単行本の新刊で書店に置いてあった。インパクトがあるタイトルでこれはいったいどんな本なのか?手に取ってみたがビニールでパッキングされて中が見られない。文庫本になったので買ってみたよ。これは面白い。歌人である筆者が街で集めたインパクトがある言葉。筆者曰く「偶然性による結果的ポエム」。たとえば電車で向かいのおばさんが親しげに話しかけてくるので誰だったか必死で思い出そうとするがわからない。するとおばさんが自分を指さして「知らない人だよ、あんたの知らない人!」


何者

何者

たしか直木賞受賞作だよね。だいたい直木賞受賞作というのは読むに値しないものが多い。好きな作家の作品でも直木賞受賞作はダメだ。お金を払って本を読む人が選んだ作品と、お金をもらって本を読む人が選んだ作品では選考基準が違う。「このミステリがすごい」とか「本の雑誌年間ベストテン」は前者。趣味の違いはあるが大きく外れない。後者の典型が直木賞。趣味が合っても当たりが少ない。ただし、作者の将来性とか伸びしろを見る目がある先生方が選ぶので、むしろ直木賞受賞作は外して、受賞後第一作から読むべし。


十六夜荘ノート (一般書)

十六夜荘ノート (一般書)

てっきり三浦しをんの「木暮荘物語」みたいな話かと思ったんだ。いわくありげな住人がすむアパートがあって、一人一人のエピソードが語られるような。ぜんぜん違った。映画にもなった「小さなおうち」のダーク版というか。今は亡き十六夜荘の持ち主の戦前戦中のエピソードと、それを相続した青年が交互に語られる。昔話の登場人物が現代の誰かがサプライズになっている。作者は女性だがなかなか骨太の小説。ほかの作品も読んでみたい。


なぎさ (単行本)

なぎさ (単行本)

新刊が出たら必ず読むのが伊坂幸太郎奥田瑛二とこの人。私生活では結婚、離婚、再婚、うつ病で闘病生活とたいへんご苦労をされている。短編集は傑作が多いが、以前は長編がイマイチだった。あ、そうだ。この人の「恋愛中毒」は直木賞受賞作だけど面白い。むしろ、この作品あたりから長編もイケてる作品が出てきた。本作は地味な専業主婦の姉、自由奔放な妹、ブラック企業に勤める姉の夫、お笑いタレントを廃業し同じ会社に勤めるその後輩、当時のパトロン、登場人物のエピソードが並行して描かれるが物語の終盤に向かって彼らの人生がどんどん交差し融合してくる。ラストは重松清的な「問題はなにも解決していないが、その問題に正面から向き合う心の準備ができた」という。


3月は3冊の長編を読むのに1週間ずつかかり(電車の中だけなので)、最後の週に読み始めたゴシックロマンが1週間越え。寝る前に布団で読んでいたこの本の5冊で終了。実話系ホラーの平山夢明福澤徹三の共著。てっきりリレー形式で話を続けるとか、同じテーマで二人が書くとか凝った構成なのかと思ったら、前半は福澤さんの作品、後半は平山さんの作品、最後に対談。もっと工夫しようよ