5月に読んだ本

コリーニ事件

コリーニ事件

独特の雰囲気が良かった短編集「犯罪」の作者、初めての長編。ただ、短編が良かったからといって長編が良いとは限らない。また薄いわりに高いので買わないでいたら、これが本八幡ドンキホーテの4階にある古本屋にあってびっくりした。近所にこの本を読んだ人がいたんだ。弁護士を開業した主人公の最初の仕事は大企業の会長をホテルで殺害した男の国選弁護人。犯人は犯行を認めているし状況も疑う余地がない。どう考えても初仕事に向かない裁判。主人公の調査で被害者と加害者の意外な過去が判明する。だが、この話はそこよりも、短編集で見せた作者のもの悲しく淡々とした語り口としっかりした人物造形。読んで良かった、古本屋に売った人、ありがとう*1


数学×思考=ざっくりと  いかにして問題をとくか

数学×思考=ざっくりと いかにして問題をとくか

5月に読んだ本は上の1冊以外は全部はずれ。本書は数学的思考とは厳密に式を立てることばかりでない。「最小二乗法」や「モンテカルロ法」など著名な解法をベースにしながらも、正確な解を導くにはデータが足りない状態でいかに「だいたい」の答えを「ざっくり」出すかを解説した本。こうやって書いてみると良い本ではないか。その割りに感動がなかったのはなぜだ。


路地裏のヒミコ

路地裏のヒミコ

「粘膜兄弟」などヌメヌメ系ホラーの作者による中編集。本作はヌメヌメ系は姿を消したものの、おバカで異常なシチュエーションはあいかわらず。ただし物語はその異常な設定の中で異常なりの論理を貫いてきれいに着地する。この作者、ふつうのミステリーを書けば相当に上質の作品を書けるはずなのだが、あくまでヌメヌメとおバカに拘る。その心意気に拍手。


襲名犯

襲名犯

江戸川乱歩賞受賞作。ということは新人。連続殺人犯が処刑された直後、その意志を継ぐかのように現場にサインを残して犯行を重ねる者が現われた。全体的に楽しく読めたのだが、動機や登場人物の行動原理に無理が多いのは次作に期待だ。


知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)

知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)

CIAの「I」はインテリジェンス。これを一言でぴったり訳す日本語はない。2020年のオリンピック開催地の投票でなぜロシアは東京に票を入れたかなど、日本を取り巻く最近の海外の動きを例にあげながらインテリジェンスの重要性を説く。


江戸のセンス ――職人の遊びと洒落心 (集英社新書)

江戸のセンス ――職人の遊びと洒落心 (集英社新書)

先日、紹介した「メロン記念日」のDVDを買うとき、恥ずかしいからいっしょに買った本。著名な扇子職人を講師に呼んで、江戸時代から伝わる道具やデザインの考え方を講演したときの再録。こういうのを読むと江戸時代すげえーと思う。L字型の金尺って見たことあるでしょ。あれの裏面の目盛りを使うと円周が測れるんだって。さらに金尺を2個使うと、任意の平行線を7等分することもできると。


心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法

心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法

常識を疑うことから始めよう

常識を疑うことから始めよう

この2冊はkindleのセール本。数百円だったから良かったけど、読みでがない。どっちも一つの章が活字本だったらたぶん2ページで、いろいろな本から引用したエピソードを集めたもの。もちろん何冊も本を買う代わりにこれ1冊読めばエッセンスがわかりますよーってことだと思うけど、なんかな

*1:自分で新刊を買えって