4月に読んだ本

日本語は論理的である (講談社選書メチエ)

日本語は論理的である (講談社選書メチエ)

日本語は主語がなくても成立するし順番もどうとでも入れ替えられるし欧米の言語に比べて論理的でない。そういう自虐的な日本語観と、英語の文法にそのまま当てはめただけの学校文法の問題点をあげている。類書も多く出ているがそもそも「主語」という概念がすべての言語にあるわけではないので、「主語が省略されている」という言説自体がナンセンス。本書では論理のタイプが異なるだけで日本語も十分に論理的な言語であることを論理学から証明する。だろ、私もおかしいと思ってたんだ。「会社に行ってくるよ」と「僕は会社に行ってくるよ」。これは主語が略されているだけの違いだろうか。そもそもこの2つの文は意味が違うよね。前者は自分の行動を相手に伝えただけ。後者はこの文の前提になる文脈があって、その中で「君はともかく僕は」とか「亜美は学校に、僕は会社に」とか、「僕」か「会社」に力点を置いて発せられる文だよね。


毒殺魔の教室

毒殺魔の教室

恩田陸湊かなえタイプの関係者の証言から事件が浮かび上がるタイプの連作集。被害者も犯人もずっと前に死んでいる終わった事件を振り返る。真犯人がいるというわけではないのだが、犯人の動機や被害者と犯人の関係性に新事実が少しずつ浮かんでくる。ああ、この人の作品がもっと読みたい。


デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)

デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)

買ったまま2年くらい放置してた本。もっと早く読めば良かった。それぞれ人生に挫折した人たちがそれぞれの理由で忍び込んだ閉店後のデパート。どんどん人物が組み合わさっていって最後は大がかりな大団円を迎える。アイデアは良いのだがそれをまとめあげる筆力が無くて残念な結果に終わる小説があるかと思うと、作者のような大御所は冷蔵庫に残っている材料だけでおいしいチャーハンを作れるようなと言ったら作者に失礼か。


作者はかなりホラー色の強い作品を書いていたのが、ホラーがだんだん借景になって本格的なミステリーになってきた、いわば平成の横溝正史のような人。本作はワゴンセールで200円で売ってたので大きな期待をしないで買ったのよ。学園物ライトノベルかと思ったらけっこうヘビーなミステリーでした。


大森荘蔵 -哲学の見本 (再発見 日本の哲学)

大森荘蔵 -哲学の見本 (再発見 日本の哲学)

これは読むのに2週間近くかかったぜい。実在論だと目の前のコップはおろか、それを見ている自分でさえ存在しているという確証が得られない。映画「マトリックス」のあれね。ところがこの大森という人は「それでも確かに存在すると思う私のこの感覚はなんなんだ?」という地点から出発する。その先を要約できる頭が私にあったらいまここでこんなことをしていない。


フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)

最後の1章だけ残してクローゼットの奥にしまっていたのを思い出した。フェルメールはいいよね。陰というか闇をこれほど美しく描くことができるなんて。この手の本は図版がモノクロだったりするとしらけるのだが、本書は新書版ながら全点カラーで作品を紹介していて見ているだけでも楽しい。


ホラー小説でめぐる「現代文学論」―高橋敏夫教授の早大講義録 (宝島社新書 250)

ホラー小説でめぐる「現代文学論」―高橋敏夫教授の早大講義録 (宝島社新書 250)

すごく期待したんだよ。作者はW田大学の学生アンケートで1位になったほどの名講義らしい。その講義を本にまとめたのが本書。なにこれ? これなら「本の雑誌」に出ているエッセイの方がよほどホラーと文学について深い点を論じている。この先生がこのくらいの人なのか、これ以上にすると学生が付いてこないのか。


非・バランス (講談社文庫)

非・バランス (講談社文庫)

児童文学賞を獲得したけっこう有名な本。重松清の小説にも通じるものがあるのだが、問題をかかえた主人公がいて、いろいろな出来事やいろいろな人とのかかわりがあって物語がエピローグを迎える。実は主人公を取り巻く環境は何も変わってない。だが、その環境と向き合う主人公の心の有り様が、出来事や人との出会いで変化をしている。そうなのだ、不幸とは不幸な出来事があるのではなくて、その出来事を自分の心が受け止められないときに不幸になるんだよね。


動機 (文春文庫)

動機 (文春文庫)

映画化やテレビ化がいろいろされてる売れっ子作家だよね。でも私は出世作の「半落ち」「クライマーズ・ハイ」以来の3冊目だよ。うまいなあ、実にうまい。クライマックスの盛り上げ方と感動のさせ方が。


ベリィ・タルト (文春文庫)

ベリィ・タルト (文春文庫)

そこらへんの女の子がアイドルになる話。といってもアイドルになる女の子ではなく、アイドルにしたてる元組員が主人公。この作者の小説、登場人物すべての人物造形がしっかりしていて敵役にも感情移入ができるんだよね。別の作品でもそうだったが、脇役が主人公のために死ぬんだよね。それがただの自己犠牲ではなくて、ひたすら悲しくひたすら愛おしく感じるような展開で。よくこういうへんてこな話を考えつくよなあ。

あ〜あ、連休を2つに分けて取れてばいいのに。あ、そうだ。明日の笑っていいもとに華子様2号が出るそうだ。もちろんテレフォンショッキングではないよ。呼ぶ人いないでしょ