広くて狭い札幌の謎(後編)

【狭いは便利】たとえば渋谷においしい店があるとか、銀座においしいケーキ屋*1があると知ってもなかなか行く気がしない。ましてや千葉県の家から車で行ったら往復で半日以上かかる小旅行になってしまう。ところが、札幌だと家から繁華街のどこでも距離は10kmもなく、道も広くて空いているので車で30分以内に行けない場所は無い。この狭いことの便利さを江戸っ子の私は札幌で実感することになった。
【狭いは不便1】狭いと言うより人口、つまり商圏の小ささに起因することだが、専門店が少なく規模が小さい。デパート、本屋はどこでも同じ品揃えしかなく、ちょいと変わったものを手に入れようとすると探すのに苦労する。秋葉原の電気街、神保町の本屋街、合羽橋の道具街のような場所は無い。これは札幌に限らず他の地方都市に住む方の悩みであろう。
【狭いは不便2】やたら知り合いに会う。私などは転勤者なので知り合いなど少ないが、同僚の道産子と大通周辺を歩いているとそいつがやたら知り合いに挨拶をする。札幌からこちらに戻ってからのこと。買い物があって休日に秋葉原に行った。ある店の前に長蛇の列ができているので、新しいゲームの発売か、アイドルのサイン会かと思ったら、美竹涼子のサイン会だった。先頭の人はかなり前から並んでいるはずである。これが札幌だったら知り合いに会う危険を冒さなければならない。「あら〜、ケンちゃん、久しぶりだね〜〜*2なんで並んでんだべ」とか知り合いのおばさんに言われる可能性が高い。東京なら同好の士以外に会う可能性は無いだろう。このあたりの匿名性は大都市ならではのものである。専門性と匿名性。やはり、おたく文化はこれからも東京が発進の地であり続けるのだろう。

*1:実は私は下戸の甘党

*2:「だね」の語尾を独特の抑揚を付けて伸ばすのが北海道弁の特徴