泉里香「光る密子さんへ」

「光る君へ」、「マル秘の密子さん」、どちらもちょっとなので、まとめてドン。大河ドラマの方は、まひろ(紫式部吉高由里子)が物語を書く決意をするというシリーズ後半へのターニングポイントになる回...だと思う。いままで見てなかったので自信がないが。そして、これまた自信がないが、自分の胸中の思いを天才肌のあかね(和泉式部泉里香)に確認したかったのだと思う。歌の勉強会の帰りに廊下でまひろはあかねに問いかける。

   
   「枕草子をどのようにお読みになったのかもう一度お聞かせ願えませんか?」

   
   「あまり惹かれなかった。艶めかしさがないものー」

   
   「枕草子は気が利いてはいるけれど人肌の温もりがないでしょ」

   
   「!」

   
   「だから胸に食い込んで来ないのよ。巧みだなあと思うだけで」

   
   「黒髪のみだれもしらずうち臥ふせば」

   
   「まづかきやりし人ぞ恋しき」

   
   「!!!」

「黒髪の みだれもしらず うち臥ふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき」(黒髪の乱れにも気づかずに横たわっていると初めてこの髪をかき撫でてくれた人が恋しくて仕方がない)。これは和泉式部の代表的な歌で、廊下で人に聞かせるようなものではない。ピカソがトイレの壁に「ゲルニカ」を描くようなものだが、あかねの天才ぶりを示している。このやり取りだけでも、まひろがこの時代の書物には何が無いか、そしてそれを自分が書こうと思ったかがわかるね。たしかに枕草子にはワクワク感やエロスは無い。泉里香の出番はここまで。あかね本人にその自覚はないが、まひろの背中を押す重要な役割だった。

「マル秘の密子さん」の出番はもっと少ない。数秒の回想シーンだけ。

   

   
   「あなたみたいな人間に社長なんか務まるんですか?」

8月ももうすぐ終わりなのにまだ5話。「海のはじまり」が昨日で8話、「降り積もれ」が先週末で7話なので進行が遅いが、逆に9月中旬まで楽しめるわけだ。1話から3話までは密子さんサイドが優勢、会社側に連戦連勝だった。4話と5話では密子さん側は劣勢で、反撃の糸口がつかめない。その代わり密子さんの過去や動機が明らかになる回だった。その結果として泉里香が出てきたからね。でも予告編を見ると次回の6話ではまた攻勢に転じるみたいだ。姉を助けたレモンの君、じつは九条の息子でこいつは良い奴というオチなんじゃないの? 「あなたみたいな人間」も良い意味で使っているとか。