「セーラーヴィーナス」愛野美奈子の蹉跌(その5)

早くも破綻しかけてる「セーラーヴィーナス=プラス1の戦士」説であるが、ひとつだけ確かなことがある。小林靖子の目から見て、そこまでの無理をしてでも設定を変えなければならないほど原作の愛野美奈子セーラーヴィーナス月野うさぎセーラームーンとキャラがかぶるのだ。もしくは他のセーラー戦士4人の中に入ると美奈子ヴィーナスはキャラが立たないのだ。
プラス1の戦士に沿ってセーラーヴィーナスをもう少し振り返ってみよう。前世の記憶がヴィーナスや二匹のぬいぐるみの口から語られることはほとんどなかった。我々、視聴者は前世でのセーラーマーズやセーラーマーキュリーがどんな女性であったか興味は尽きないのだが、予算の都合やLeo16さんが唱えられているように幻の劇場版のために意図的に隠蔽したのか。あるいは小林靖子から見て特に語るに値しないことだったのか真相はわからない。ただし、愛野美奈子が他のセーラー戦士とカラオケクラウンでいつも一緒にいると、うさぎやまことから前世のことを聞かれるだろう。うさぎが「ねえねえ、美奈子ちゃん。前世でもレイちゃんって怒りっぽかったの?」と。自覚的にせよ、無自覚的にせよ、前世の模写を番組で描きたくないなら、または描くつもりがないなら、美奈子は他の4人と離しておく必要がある。また、4人が気楽に美奈子に接触できなくするには美奈子が芸能人であるという設定は実に都合が良い。
また美奈子=ヴィーナスにはもう一つの秘密がある。そう、病気である。カラオケクラウンでともに笑い励まし合う4人と、ホテルのソファにひとり横たわる美奈子。プラス1の戦士であるセーラーヴィーナス小林靖子が与えた属性は、ビジュアルや必殺技ではなくて、病気と孤独なのである。
(つづく)