「セーラーヴィーナス」愛野美奈子の蹉跌(その8)

くうう〜、昨日のブログで大嘘を書いてしまった。詳しくはコメント欄の最後、ikidomariさんの文を読んで欲しい。アニメと同じ地球滅亡のプロセスがact37で美奈子の口から語られているのだ。なにしろこの回は、月野家での亜美とまことの「うさぎごっこ」は鮮明に覚えているが、美奈子とレイの会話などレイのコスチュームに気を取られてまったく覚えてないのだ。ああ、よかった。失策を仲間内から指摘される分には良い。初めての人に「てめえ、いいかげんなことを書くんじゃねえ」と書かれると厚顔の私でも傷つく。
しかし、それならそれでセーラーヴィーナスはもっとクインメタリア殲滅に注力し、忠誠を尽くすプリンセスの恋を成就させるのが親衛隊長の使命なのではないか。そのへんはact37のLeo16さんのレポを待とう*1。うさぎと衛のことばかり気にかけていたセーラーヴィーナスだが、彼女が何をしてきたかシリーズを振り返ってみよう。

     (act7)セーラームーンがタキシード仮面に近づかないように警告→失敗

     (act32)うさぎと衛が抱擁するのを陰から見守る→失敗

     (act35)うさぎから衛の記憶を消去しようとする→失敗

     (act49)うさぎが衛を刺し殺し地球が滅ぶ→すでに死亡しているが任務失敗

たったこれだけだ。しかもすべて失敗。そりゃそうだ、これが成功していたらセーラームーンの物語はそこで終わってしまう。二人の恋路を妨害することが前世をくりかえさないこと、地球の滅亡を防ぐこととしてしまっては、はじめから失敗することが決められている使命なのだ。
こんなことなら、はじめから衛の命を狙って暗躍する悪の戦士として登場させたらどうだったのだろう。セーラー戦士の味方ではあるが、衛の敵。最後の最後でうさぎと衛の本当の愛を知り、衛を守って死亡。そこで彼女の目的が判明し、セーラーヴィーナスセーラームーンに詫び、セーラームーンは過去に何度も自分を守ってくれたことの礼を言うと、にっこり笑って息絶える。こんな展開のが潔くないか。いかにもプラス1の戦士らしい。だがここまで原作を変えてしまっては、もはやセーラーヴィーナスではないし、アニメ原理主義者は東映に火をつける。
この点についてはLeo16さんがご自身のブログに私が付けたコメントへの返事の中で、「劇場版が計画されていて、前世の物語はそこで語られる予定だったのではないか」と述べられている。これはたいへん魅力的な推測である。今回、改めてセーラーヴィーナスを考察したが、彼女の口から「前世」や「地球の破滅」と語られるほど、それがイメージできない視聴者はヴィーナスが空回りしているようにしか思えない。この問題は実写版の最大の謎である「最終回問題*2」にからんできそうだ。過去に2回、最終回の考察をしたが、2回とも書いておきながら自分で納得できなかった*3
さて、放送されなかったことは想像するしかないが、小林靖子セーラーヴィーナスをプラス1の戦士として描きたかったのはまちがいないようだ。すると最終決戦に臨むのは本来のセーラー戦隊である4人。実際はセーラームーンがボスキャラになってしまったので3人だが。プラス1の戦士であるセーラーヴィーナスがそこにいる必要はない。あくまでも助っ人なのである。
もう一つの理由だが、そこにヴィーナスがいたら彼女がつらすぎると思う。前世の悲劇をくりかえしてはならないと思いながら、プリンセスがエンディミオンを想う気持ちとの板挟みになり有効な手を打てずに最悪の結果を迎えるわけである。白装束に阻まれて地球を滅ぼすために天に飛翔するプリンセスセーラームーンを自分の目で見たら、それはあまりにも残酷なラストである。
ところで、act47ラストで火野レイによって読まれる愛野美奈子の遺書で、美奈子はうさぎたちに「星の運命を変えて」と託す。ここで美奈子がイメージしていた星の運命の変え方とは何だったのだろう。
(つづく)

*1:ヲイ!

*2:数学の「四色問題」にちなんでこう名付けました

*3:そんなもん書くなよ