11月に読んだ本

さよならの儀式

宮部みゆきのSF短編集。以前にSFとミステリーを比較したことがあったが、あれはまちがっていたことが今ならわかる。SFとは舞台のカテゴリ(現在ではまだ存在しない技術や別の天体を舞台にした文芸)、ミステリーとはストーリーの進行方法(謎が提示され、それへの興味で物語を引っ張る文芸)、ホラーは要素(読者を怖がらせる要素が入っている文芸)。なのでSFホラーミステリーという小説や映画は成立する。すぐに思いつかないけど。

 

道化師の退場

帯は大げさ。でもそれにつられてしまった私。「余命半年の探偵が挑む最後の事件」と書いてあったのに、実際は入院している探偵の依頼を受けて事件の調査をする主人公。その設定を除くと、あとは普通のミステリー。

 

([て]3-2)ミナトホテルの裏庭には (ポプラ文庫)

ミナトホテルの裏庭に死体が埋まっていてそれに気づいた主人公に犯人の魔の手が迫る...という話ではない。ポプラ社がそんな物騒な小説を出さない。営業してるんだか廃業したんだかわからないくらいのホテルを舞台にしたハートウォーミングな物語。残念なのが登場人物があまりにもステレオタイプ

 

憤死 (河出文庫)

高校生でデビューして大学生のときに芥川賞を取ってミリオンセラー。早熟の天才だがいまでも執筆活動をして、新しいジャンルに挑戦しているのは立派。一発当てて、その作品だけで巨万の富を築き後がないマンガ家はこういう人を見てどう思うのか。まあ、小説家はそれほど儲からないからね。本書はホラーというほどではない「奇妙な味」の短編集。その捻れ具合は大したことないのだが、小説としての完成度が高いのでどれも佳作。

 

文庫本は何冊積んだら倒れるか

以前に紹介したが私の先生。会ったことはないけどね。先生、いまだにこんなことばっかりやってんだなあ(泣)

 

Iの悲劇

過疎、というより住民がいなくなってしまった村に県の事業として移住者を呼び込む。主人公は担当の職員が、移住した家でいちいち問題が起こる。それの連作短編集で最終話でサプライズがあるという、これはお約束。いつも秋に新作が出て「このミス」で1位になる作者だが、これはどうかなあ。それぞれの話もサプライズも小粒。