名場面・迷場面(前編)

わずか1秒のシーンが原稿用紙1枚分を物語ることもあれば、一言のセリフ回しが話の流れを分断することもある。これを読んで下さっている方も、それぞれ好きな場面や残念だった場面があろうかと思う。今回は演出の点からひとつずつ書いてみた。

   act28 「亜美ちゃんおかえりの巻*1」舞原監督

     セーラーヴィーナスが現われセーラー戦士5人と、クンツァイト+妖魔の戦いになる。

     ヴィーナスの指示でタンバリンを構えるマーズ、ジュピター。マーキュリーのタンバリンが無い。

     セーラールナが駆け寄る。「マーキュリー!受け取って」*2

     タンバリンを手に取り、うなずくマーキュリー*3

     それを見て微笑むムーン。そしてムーンライトスティックを取り出す

前週のact27のラストでダーキュリーの凶刃によってスティックは破壊されている。アニメではこういうパターンのときは次週に新しい武器が登場するが、実写版では元のままだった。たとえ武器や装飾品が破壊されても、変身し直すと復元されるようである。復元というか、変身のたびに生成されるのかもしれない。私のような重箱の隅をつつく視聴者はスティックがどうなったのか非常に気になっている。かといって、この緊迫した場面でそれを説明したら間が抜ける。それをわずか1秒のシーンでフォローしているのが、ムーンの表情である。ムーンがスティックを見て一瞬驚いた表情をする。「あ、直ってる!」とムーンが思ったのを、この表情から視聴者は読み取るわけである。『いちいち説明はしないが、先週にスティックが壊れたのを無視しているわけではないよ』と。これが脚本に書いてあるのか、現場で舞原監督が指示したのかは不明だが、沢井美優の表情も素晴らしい技ありのシーンである。
また、この回のルナの登場シーンで、ぬいぐるみ形態と人間形態の使い分けも正しい。登場2回目で、まだ違和感のある人間ルナを*4無理に多用しない。ラストでマーキュリーの肩に乗るルナ、ヴィーナスの肩に乗るアルテミスを対比させている*5。この使い方はセラムン東京フレンドパークであるact40でも守られていて

     人間で競技に参加→くしゃみをして変身が解ける→人間で応援→ぬいぐるみでアルテミスと並ぶ

と目まぐるしく人間とぬいぐるみが入れ替わっている。最終回の地球が滅びるシーンでは人間ルナがアルテミスを抱いている。これは現実感に乏しいぬいぐるみより人間体の方が地球が破滅する悲壮感が伝わって来た。なお、最後の3回くらいはほとんど出番の無かった小池里奈ちゃんに配慮したというのが真実かもしれないが。

*1:軽薄なタイトルをつけるな

*2:タンバリンを渡すだけだから変身しなくてもいいだろうに

*3:「うわぁ、なんだこれは」と思ったとか思わなかったとか

*4:ほとんどの人は最後まで違和感が抜けなかったようだが

*5:もちろんセーラールナが亜美ちゃんの肩に乗っていたらクンツァイトネフライトとヴィーナスの同時攻撃にあっていただろう