セーラーマーズ「火野レイの逆襲」(後編)

昨日の続き、(4)からです。
【(4)戦士の覚醒】セーラー戦士は次の2つが欠けた状態で21世紀に復活した。

     (1) 前世の記憶

     (2) 戦士の力

この2つがペアで「戦士として目覚める」ことだと思ってたんだが、美奈子は死の直前まで(1)だけ、他の戦士は(2)だけ。たぶん前世の記憶が甦ると、古代月の王国のシーンが必要になり、それを作る予算がなかったので黙殺したんだろうな。*1そこで戦士の力がいかにして蘇るか、そして何がそのきっかけになるかが実写版の重要なイベントになる。

     戦士     放送  きっかけ     戦士の力

     ムーン    act25 マスター斬殺   プリンセス、マスター蘇生、手袋接合

     マーズ    act23 仲間を信じる   真妖魔退散

     マーキュリー act29 なんとなく    水芸でタンバリンを持ち上げる

     ジュピター  act31 孤独ではない認識 真シュープリームサンダー

     ヴィーナス  act46 現世を大切にする 変身能力復活+新技

この覚醒ストーリーはマーズのact23が初めてで、マーズが覚醒した過程(自分の欠点に気づく→戦士の覚醒→パワーアップ)が視聴者にプロトタイプとして提示される。これを逆手に取ってジュピターの覚醒が「孤独であることを受け止める」とミスリードをされact46への伏線が張られる。また、ヴィーナスが戦士の力に覚醒していないことが番組終盤で明かされ、手術を受けて欲しいレイと、戦士として残された生を使い果たそうとする美奈子の対立を呼び番組終盤のメタリアと並ぶテーマとなる。
【(5)ただドンくさいだけのうさぎ】以上、実写版オリジナル設定におけるレイの役割を見てきたが、すべてアニメ版ではうさぎ=セーラームーンに与えられたであろうイベントである。なぜ火野レイなのか。これはセーラームーンの物語に対する武内直子小林靖子の世界観の違いにある。

     武内直子   ムーン+セーラー戦士4人

     小林靖子   セーラー戦隊(ムーン、マーズ、マーキュリー、ジュピター)+ヴィーナス

そう、小林靖子美少女戦士セーラームーンの物語を「セーラー戦隊」の物語として再構築した。そして火野レイ=セーラーマーズはセーラー戦隊のリーダーなのだ。では主人公はうさぎではないのか。いや、主人公は月野うさぎだ。戦隊物では主人公が戦隊のリーダーとは限らない。そして主人公だけでなくメンバーそれぞれの個性に応じたイベントが起こる、いや起きなければメンバーの存在価値がない。
では劇中で本人がリーダーだと言っていた愛野美奈子セーラーヴィーナスは。彼女はセーラー戦隊に属していないのだと思う。昨年末は最終回の意味を考えてきたが、今年は実写版のもう一つの疑問「愛野美奈子=ヴィーナスとはなんだったのか」を考えてみたい。*2

*1:そういうことを言うな

*2:って別に1年間かけて考えるわけじゃないですよ。私はそういうことを1日中やってる人じゃないですから。ちゃんと仕事もしてますし家族もいます