10月に読んだ本

X-Fileみたいなもんだな。警視庁の科学捜査研究所だかの一部署で、従来の科学的常識では解明できない事件を捜査する。うん、実にありがちな設定だ。だがこの部署は3人しかいなくて、彼らにできることはいまある科学的なアプローチ。これに協力するのが超能力少女。これもまたありがちだが、この少女、他人とのコミュニケーションがまともにできず、人間的な生活も送れない。その割りに意地悪。なので霊に感応してもまともに教えてくれない。よって主人公たちはこの少女は何がわかったのか、何を言おうとしていたのかを探るという2重の謎解きになっているのがミソ。


認知言語学の専門家と哲学者の野矢茂樹の対談集。ふつうこの手の本だと専門家でない方の人がインタビューアになって問いかけ、専門家が答えて、インタビューアがまとめる。よって発言の量が専門家とインタビューアで8:2くらいになるものだが、この本は逆。これは面白い。専門家の発言に対して読者が「ではこういう場合はどうなの?」「でもこの場合は逆も成り立つのじゃないの?」と疑問に思うことを、野矢先生がどんどん埋めていく。その埋まり具合が実に小気味良い。この組み合わせはいろいろ応用範囲が広いのではないか。


思考停止社会とはコンプライアンスの錦の御旗の下で思考をやめてしまう社会のこと。かなり前に書かれた本だが、急にタイムリーな話題になった。たしかに違反はあった。だが、実は会社が無くなるほどの問題ではなかった(雪印不二家に対するマスコミの報道姿勢)、これを問題にするならもっとヤバい問題がある(建築偽装問題と法令の未整備)。ほかにも問題の本質を見極めないまま当事者を血祭りにするマスコミ、法令や制度の不備を放置した監督官庁を糾弾する。


日本が好きすぎる中国人女子 (PHP新書)

日本が好きすぎる中国人女子 (PHP新書)

これは知らなかった。目からウロコが3枚くらい落ちた。中国の反日感情はテレビや新聞でさかんに報道されるが、親日感情はいっさい報道されない。大学まで行くような中流以上の中国人の女子は日本や日本のサブカルチャーが大好き。日本のコミックやアニメをリアルタイムで見られるように第2外国語は日本語。数年前、反日デモが吹き荒れた同じ頃、上海ではアニソンフェスティバルに1万人が集まり、ラストでは観客全員が「残酷な天使のテーゼ」を日本語で大合唱したと。中国語の歌詞があるにもかかわらずだ。しかもその事実は日本では報道されないので日本の関係者は彼女たちにまったくアプローチしていない。商業的だけでなく外交的にも実にもったいない。


眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)

不可能犯罪を創出しようという作者の心意気は買う。だがいまさら機械的な密室かよって。私は半分あたりでメイントリックがわかってしまったよ。


怪談実話系/魔 書き下ろし文芸競作集 (文庫ダ・ヴィンチ)

怪談実話系/魔 書き下ろし文芸競作集 (文庫ダ・ヴィンチ)

シリーズ化されている書き手が豪華なホラーアンソロジー


新聞の連載を1冊にまとめたもので、読者から寄せられた質問に答える見開き2ページ。「will」と「be going to」はどう違うのかとか、「shoud」「must」「have to」はどう使い分けるのかとか。この本を中学生のときに読みたかったぞ。


禁忌楼

禁忌楼

新耳袋」の著者によるたぶん実話系ホラー。日本昔話的なテイスト。


前月に1と2を読んだ青少年向きの短編アンソロジーの第3弾。これで終わりか。もっと読みたい。


政と源

政と源

三浦しをんの最新刊。今回の主人公はふたりの老人。たいした事件が起こるわけではないのに人物造形、語り口とも秀逸。舞台が私の生まれ故郷の東京・墨田区なので懐かしく読んだ。いるいる、こういう爺さん。