貧困の再生産を断ち切るものはなんだ

娘が勤めている病院に児童精神科病棟というのがある。その名のとおり精神科の治療が必要な子どもが入院している病棟だ。病気が重い子はベッドで寝ていたり、さらに重い子は隔離病棟に入っている。それは一部で、ほとんどの子どもは娯楽室でテレビを見たり同じ入院患者の子ども同士で遊んだり勉強をしている。朝になると朝食を取って病院から学校に行く。学校が終わると病院に帰ってきて、以下その繰り返し。その話を娘から聞いて私の疑問を娘に投げた。

  その子たちは普通に学校に行って集団生活もできるんだろ? 入院する必要があるのかよ?

どう考えても家から学校に行って、週に1回くらい通院をすれば良いのではないか? すると娘が

  病気の原因は家庭の場合が多いんだ。だから家庭から離さないと病気が良くならないんだよ

もちろん全員がそうではないと思うよ。そういう子どもが多いということだ。その子たちもいつかは元の家に戻る。病気の原因になった家にだ。彼らの未来に幸あれと祈らざるを得ない。治療が必要なのは親の方かもしれないが、それは病院ができることではない。
この話を聞いて、貧困もこれに似た面がないだろうかと思った。親が病気や怪我で働けなくなったとか、夫と離婚をしたが慰謝料も養育費も取れないで、幼い子どもを抱えて路頭に迷う母親。その人たちには国が用意するベーシックインカムが必要だ。その反面、贅沢はできないまでも生活ができるだけの収入があるのに、金の使い方をまちがっている親。平均以上の収入を得る機会はいくらでもあるのに人生設計をまちがえている親。本人は自業自得として、その子どもには十分な愛情と教育(学業だけでなく生活態度も含めて)が施されない。それでも西原理恵子のようにそこから抜け出す意志の力を持った人なら良いが、そうでない子は厳しい人生が待っているのではないだろうか。
そこで前半の話につながるのだが、このような境遇の子は親から離すだけで、一般的な家庭の子が走っているレールに戻れるチャンスが出てくるのではないだろうか。じゃあ、誰が面倒を見るんだよ、その予算は、施設の場所は、なにかあったときの責任の所在は、と聞かれると何も答えられないのだが。一億総活躍プランとして女性や高齢者にもっと働かせるのはいいのだが、もっともリターンが多いのは子どもに正しい環境を与えて教育を行ない自立&自律した大人になってもらい税金をたくさん納めてもらうことだと思う。いや、ほんと具体的なプランはないのだが、病院の話を聞いてちょっと考えてみた、オチが無い話である。