ニュータイプ

私の部署に心を病んでいる男がいることは以前に書いた*1。その後も求職と復職を繰り返し、この10月で丸2年。案の定、経済的に貧窮しますます休めなくなって、休職しても体調や睡眠のサイクルを作れていない状態で復帰するので、すぐに休みがちになり人事部から休職を命じられる。先月に3回目か4回目の休職になったが、今回は主治医から「回復しました」という診断書をもらってきて3週間で復職。だが先週までの1ヶ月の出勤率が50%未満。またまた休職を命じられることになった。
私も最初のうちは彼に同情していたので、彼の出口のない堂々めぐりの話を聞いていると私のメンタルエナジーが著しく下がってくる。その私を救ってくれたのは、いつも飄々とした鱸さんであり、いちばんヤバかった3月ごろは華子様の映画に足繁く通うことで窮地を脱した。ある段階を過ぎると、彼のあまりの学習能力のなさに同情ができなくなり、彼の席を私から遠く離したこともあり最近はだいじょうぶになった。だが、彼の攻撃力は以前よりはるかに増して、最近では「自分の病気が長引いているのはM14さんが自分を甘やかしたからだ」「この部署がいやなのに異動をさせてくれない人事部が悪い」など言いたい放題。人事部も異動した先で休みがちになると受け入れ先に迷惑がかかるので、復調しないと異動させられないのだ。
最近、隣の課で彼と同じくらいの年令の男が発病し、そこの課長から事業部の中では心の病の第一人者である私*2に相談があった。私は驚いたよ。この二人の発言が実によく似ている、いや瓜二つなのだ。それも私が5年くらい前に初めて遭遇したうつ病の人とはまったく違う。その特徴を書くと

  ・気位が高く見栄っ張り

  ・社内での評判は悪く、仕事ができないカテゴリに入る

  ・にもかかわらず、自分は「できる社員」と信じて疑わない自信家

  ・心療内科や精神科に行きたがらない

  ・自分の病気の心配よりも社内の評判のが心配

  ・精神科でもらった薬をインターネットで事細かに調べ、副作用が心配なので飲まない

  ・会社や職場の不満はいくらでも出てくるが、自分自身の不満はなし

一人だけではよくわからなかったが、二人まとめてだといろいろなことが浮き彫りになる。これは私が知っているうつ病ではない。しかも扱いが極めてやっかいだ。以前に会ったうつ病の人は、とにかくベクトルが内向き。なんでも「自分が悪い」ことにしてしまう。だが、それは真実ではない。よって、その人には「君が悪い訳じゃないよ」「君はちゃんとやってたじゃないか」と彼への慰めと、真実への導きが同じ方向を向いている。この対処のしかたはわかる。
ところがいまの二人は話を聞いていると不思議と挫折経験が無い。前の部署でダメ出しをされていまの部署に異動をしたのにそれを挫折だと思ってない。むしろ罠にはめられたとか、いまの部署に引っ張られたと思っている。この二人には内向きのベクトルが無いのだ。自省が無いから進歩もない。自分を見つめ直すことが回復へ最初の一歩だと思うのだが、彼らはフィルターを通してしか自分を見ていない。おそらくそのフィルターのわずかな綻びから見た自分の真の姿が、または自分を優秀な社員だと信じて疑わない彼らには理解できない、無能な社員に対する周囲の反応が病気を呼んだのだろう。すると、彼らに真実に見せることはあまりに残酷であり、私にはその自信がない。まあ、私が言ったところで「M14は人を見る目が無い」と思われるだけだと思うが。彼らへの慰めと真実が逆の方向を向いているとしたら、私は彼らにどのように接すればよいのか。

*1:http://d.hatena.ne.jp/M14/20090107

*2:うれしくない!