act16台本(その7)

今日の台本は大阪なるが穴に落ちるシーンである。なお、台本に書き込みがあるが、これは私ではない。もともとこの台本を持っていた制作関係者か、私の前に台本を手に入れた人か。放送と違うところが2カ所ある。
まずは、台本では道を替えようとする亜美だが、放送では橋の上。この場を逃れるにはセーラーマーキュリーに変身して橋から飛び降りるしかない。それはそれで、なると新しい関係が築けそうだが、放送では「どうしよう」とつぶやく。運良く蟻地獄が現われなかったらどうするつもりだったのか。いまビデオを見直したら、この蟻地獄、けっこうベコベコしていた。
もう1点あるが、おわかりか?

     既に腕だけしか見えてない。

     亜美がその腕を掴もうと手を伸ばすが、一瞬の差で届かずなるは消える。

この場面が成り立つにはすり鉢状の穴では無理なのである。そう、台本ではただの穴だ。もちろん、すり鉢状の蟻地獄の方が視覚効果は優れている。穴がどんどん大きくなって、落ちた人間が斜面をずるずると滑っていく様子がダイナミックである。ありがちな表現だと言ってしまえば身も蓋もないが、こういうところにも監督や撮影陣は工夫をしているのだ。
ところで木野まことは穴に落ちて風邪を引くわけだが、風邪を引きそうなのはすり鉢ではなくて台本どおりの穴である。中がすごく冷えているとか湿っているとか。放送当時はまことが風邪と穴を結びつけた論理の展開に立ちくらみがしたが、台本を読むとなんとなく納得できる。
(つづく)