冬のビデオまつり「この世界に残されて」「メタモルフォーゼの縁側」

昨日、今日は完全に真冬だったよ。

この世界に残されて
【1,700円】ハンガリーの映画。ホロコースト生き残った16才の主人公。だが家族を失った悲しみから立ち直れず、自分だけが生き残った意義も見いだせず引き取られた叔母の家でも、学校でも投げやりな毎日を送っていた。自分と同じ匂いを感じさせる42才の医師と親しくなり少しずつ明るさを取り戻していった。だがソ連に支配されたハンガリーには全体主義の闇が濃くなっていった...少女や医師の心のひだを1枚1枚めくるような、丁寧な演出がいい。絶対に悲しいラストになるのだと思ったらハッピーエンド。二人が家族になることではなく、それぞれ自分が愛する人を見つけて共依存の状態から巣立っていくのがいい。

ウィッチクラフト/黒魔術の追跡者
【1,200円】アルゼンチン映画。町外れで暮らす貧しい母と娘。娘は普通の子として学校に行っているが、母は魔女の娘だった。スマホが欲しい娘は友人たちとアルバイトをすることになるが、それは人身売買組織の罠だった。娘から送られる念で誘拐されたことを知った母は、黒魔術を使って娘を追跡する...魔術を使うには犠牲を払わなければならないのがミソ。その程度によって指先を切ったり、腕を傷つけたり、血を流さなければならないのが痛々しい。あと、娘は貧乏のはずなのに小太りなのが変でしょ。予算の関係かけっこう雑な作りなので、これはハリウッドリメイクをしたら佳作になると思う。

ライド・ライク・ア・ガール
【1,700円】私は知らなかったが世界から競合が集まるメルボルンカップという競馬のレースで、初めて女性で優勝した人の実話。この人の人生自体がドラマチックすぎて、素材の良さで満足度のある映画に仕上がっているが、全体的に駆け足で再現ドラマを見ているような浅さが残念。それでも主演の女優さんの魅力で最後まで引っ張るのはさすが。クライマックスのレースのシーンはなかなか良い。

ワイルドシングス
【1,700円】「ゆっこロードショー」のどんでん返し特集で紹介されていた映画。教師に強姦されたと訴えた町の有力者の娘。無実を訴える教師に敏腕弁護士が付き、原告側の証人への反対尋問で意外な事実が明らかになり無罪を勝ち取る。ここまでが1時間。この後はどういう展開になるのかと思ったら大どんでん返し。そしてラスト30分でそれはもうしつこいほどのどんでん返し。さらにエンドロールの間に流れるフラッシュバックで最後のどんでん返し。このどんでん返しを楽しむ映画だが、ではストーリー自体はど面白いのか、感情移入できる登場人物はいるのかと問うと1,700円が限度だなあ。

メタモルフォーゼの縁側
【1,800円】熱中できることも将来の夢も見つからない高校生が芦田愛菜ちゃん。バイト先の本屋でBLマンガを買っていたお婆さんと仲良くなり縁側に座って二人でマンガを熱く語り合う...30分で仲良くなってしまったのでこの先はどんな展開になるのかと思ったらそう来るか。計画していたことがうまく行かなかったり、ラストでは離ればなれになってしまうのだが、それでも悲壮感がないのがいい。監督は映画の演出はほとんどなく、おもにテレビで活躍する人みたいだ。こういう監督は顔のアップばかりのワイドショーみたいな映像になりがちだが、この監督は空間の広がり、静と動の使い分け、光と影のコントラスト、立派に映画監督をしている。

スローターハウス・ルールズ
【1,200円】議員や経営者の子どもが入る名門学校がスローターハウス。無理矢理に入学されられた主人公は針のむしろ。なにしろ最上級生を頂点とするスクールカーストがあり、下級生はなにか理由をつけてはいじめられる。広大な敷地の端で天然ガスの採掘を行なっている。それが地下に眠るなにかを起こしてしまった...終盤は怪物ドタバタ映画になってしまうのが残念。主人公たちが悪い上級生や先生をやっつける話が見たかった。