真夏のビデオまつり「エンジェル、見えない恋人」「アンモナイトの目覚め」

今週がピークなのかな、まだまだ酷暑が続くのかな。

エンジェル、見えない恋人
【1,700円】ベルギーの映画。透明人間なので孤独な主人公、窓から見える同じ年くらいの隣家の少女に声をかける。その少女は盲目なので、匂いと気配で主人公の存在を感じ取れる。孤独な二人は仲良くなり毎日いっしょに過ごす。12才くらいのとき、少女は目の手術を受けることになった。喜ぶ少女だが、彼女は主人公が透明であることを知らない...少女役が5才、12才、20才(正確な年令はわからないが)、この手の映画の常としてちっちゃいほど可愛い。幼年期、少年少女期の二人が幸せすぎて、この先の展開は不幸しか予測できない。だがハッピーエンドになるので安心されよ。基本はファンタジーなので、主人公はいつも全裸なのかとか、いっさい出てこない少女の親は自分の子どもが誰と遊んでいるのが気にならないのかとか、細かいことは気にしないで見ないとつまらない。ファンタジーなのに大人になった二人が一夜をともにするシーンがガチでびっくりする。

アンモナイトの目覚め
【1,700円】先に断わっておくが、この映画のあらすじを書こうとすると時代背景や二人の境遇を説明するだけで土屋太鳳のインスタくらいになるので割愛する。主役はタイタニック若草物語の人。タイタニックの人はデカプリオとは別の道を歩んで派手な映画を避け、文芸作品だけに出てアカデミー賞を獲っている。若草物語の人だって何度もノミネートされているのに、二人ともよくこの映画に出たな。ハリウッド女優の心意気を感じる作品。本作は社会的階級もそれまでの人生もまったく違う二人の女性の恋愛を描いた作品。同じカテゴリには1950年代を舞台にした「キャロル」があるが、本作はそれより100年前、19世紀のイギリス。私が衝撃だったのがラストシーン。その前日、いわばクライマックスにあたるはずの二人の再開で、若草物語が思う二人の幸せは、タイタニックが思う幸せとは違うものだったことがわかり絶望する。いまから150年以上も前なので、べつの世界に属してる二人だから相手を想像できないよ。この映画、いったいどう終わるのだと思って見ていると(この先はネタバレになるがこれを知っていても本作の鑑賞に影響がない)貧しいタイタニックは初めて大英博物館へ行き、自分が発掘した化石が展示されているのを見る。顔を上げると、展示台の向こう側に若草物語が立っている。セリフはなく、二人とも無表情、睨み合うくらいの無表情で立ち尽くしている。そこでエンドロール。なんじゃこりゃ。ドイツ映画「コリーニ事件」の感想で、文脈と映像で観客がわかることは、わざわざセリフにしないのが秀逸と書いた。だがこの映画はセリフが無く、文脈では絶望的、映像的には無表情で凍り付いている二人。なんの情報もないわけだ。ここで登場するのが映画が持っているもう一つの要素、BGMだ。このシーンで流れる音楽で、二人の未来が平坦では無いにしろ、けっして絶望ではないことがわかる。これはまいった。

ミュージック・イン・ミー!
【800円】これは映画だったのだろうか。すごくチープな作りなのでテレビだったのかもしれない。元ミュージシャンの主人公、いまは実家の金物店を手伝っている。町の教会が100周年記念行事として聖歌隊のコンサートをすることになっているが、あまりの下手さに指導者が逃げてしまう。父親からの頼みでイヤイヤ引き受けた主人公だが、熱心な中年のメンバーはど下手、上手な女の子は反抗的、理事長は非協力的。それでも独特の指導法で光明が見えてきたところで...ピンチとチャンスがわかりやすいタイミングでやってくるベタベタな展開。終盤は見ていて恥ずかしくなるがたまにはこういうのもいいかも。

ダーク・アンド・ウィケッド
【1,500円】映画館で予告編を見てすごく良さげだったホラー映画。寝たきりの父親と看病をする母親が暮らす家に、両親を心配する兄と妹が帰る。だが母親はその前から「帰ってくるな」、二人が家に帰ってからも「帰ってくるなと言ったのに」と言い、夜に自殺をしてしまう。父親の看病と牧場で飼っている羊や牛の世話のためしばらく残ることにした二人だが、奇妙な出来事が頻発する...怪異を起こしているものの正体、その姿とか理由とかが最後までわからない。わからないだけにずっと不気味。それが幻想なのか実体があるのかさえわからない。「わからないから怖い」を最後まで引っ張り、観客を飽きさせないのはなかなかの秀作。

ドーン・オブ・ザ・デッド
【1,500円】予備知識まったくなしで見た映画。どこからともなく現われるゾンビ。噛まれて死んだ人はゾンビになる。主人公は途中で非感染者を見つけては仲間を増やし、ショッピングセンターに立てこもる。わかった、これは「ゾンビ」一作目のハリウッドリメイクだ。こっちのゾンビは走るのが速くて、塀も乗り越え、身体能力が高い。主人公サイドでよけいなことをする人が被害を広げるのも定番。見せ場がいくつもあり最後まで楽しめる。ラストは結局どうなったんだ?

わたしは生きていける
【800円】あらすじには「第三次世界大戦が勃発した世界で、少女は愛する人のところにひとり旅を続ける」と書いてあったので見てみたらぜんぜん違うじゃないか。イギリスで核兵器を使ったテロが起こる。たまたまイギリスに住む従兄弟のところに来ていたアメリカ人の主人公。男の子と女の子は別々の収容所に移送される。最年長の男の子と「必ず抜け出してこの家で会おう」と約束をする...パンク風で突っ張った主人公、シルバーの髪と濃いメイクだったのでわからなかったが、開始30分くらいで若草物語じゃん。いくら髪とメイクを代えてもここまで別人になれるのはさすがアカデミー賞ノミネート。ただ内容は全4話のテレビドラマくらいのボリウムを駆け足で通り過ぎるので、ディティールが弱い分、リアリティが無く感情移入がしにくい。シアーシャ・ローナンでさえこんな駄作に出演するのだから、アカデミー賞に縁の無い日本の俳優なんか一生に一本、傑作に出演することができたら役者人生として大成功なのではないだろうか。

LAST PARTY ラスト・パーティー
【1,500円】高校生活の最後の思い出として、どこかの島に数百人の男女が集まり連日パーティーをする催し物。そこで主人公の仲間が一人ずつ殺されていく。これは殺人だと主張する主人公だが、仲間や警察はただの事故だと信じてくれない。その間にも犠牲者がどんどん増えて主人公にも危機が迫る...ラストで犯人と動機がわかるとけっこう月並みな真相。だがミスディレクションがいくつもあり最後まで楽しめる。でも主人公が美少女ではないのはマイナス。ほかの人はどう思ったのだろうとAmazonのレビューを見て目を疑った。酷評するのはいい。各人の趣味だからな。酷評に続けて犯人は誰だとか動機はなんだとか書いている奴がいる。その必要がどこにある? 無駄な時間を使ってしまった腹いせに少しでも視聴者を減らそうという魂胆なのだろうか。これって高速道路であおり運転をするのと同じくらい無意味で迷惑な行為。変な奴が増えたな。私もたいがい変だけど。