ゴールの向こうに落とし穴

高校の友人5、6人と卒業以来、毎年2回ずつくらい顔を合わせている。今年の夏の部が先週の土曜日にあったのだがそこでのこと。東大を出て某一流総合商社に就職したのがいる。海外の支店長をやったりまあまあ順風満帆なサラリーマン人生だったのだが、定年を前にして「もう疲れた。隠居する」と会社を辞めた。当然、長生きしても大丈夫なくらいの蓄財ができたからというのもある。それからはお稽古事を3、4個掛け持ちして、気が向くと得意の英語を生かして知り合いの会社を手伝ったり、まさに悠々自適を絵に描いたような毎日。やはり安定した老後を迎えるにはベンチャー企業はダメだぞ。そもそも退職金が無いし。レガシーな大手企業に就職しないと。401Kなんかベンツやレクサスのエントリーモデルを変えるくらいにしかならない。

その彼が前回は「家庭がゴタゴタしてて」と欠席。先週は来たのでなにがあったのか聞いた。娘が二人いて両方とも結婚している。その下の娘、2才の子どもがいるのに浮気をして離婚。しかもお腹には2番目の子どもがいる。本人は旦那の子どもだと言っているが、旦那は浮気相手の子どもだろうという修羅場。それならそれで浮気相手と結婚するのも難しというドラマのような展開、これが自分の身近に実在するとは私も思わなかったよ。さらにお腹の子どもの状態が良くないみたいで家で安静にしているそうだ。そうなると子どもの面倒は老夫婦の仕事になる。孫は可愛いというが、あれはたまに相手にするからだよ。毎日がっつり育児をして、なにより孫の人生に責任を持たなければならないのなんか老夫婦はまっぴらなんだよ。なんであの苦労をもう一度やらなければならないのかと。娘だけなら「いい大人なんだから自分でなんとかしろ」と突き放すこともできるが、孫を人質に取られているのも同じなので強く言えない。奥さんの方に責任があるので慰謝料も取れず、人によっては一気に貧困になるパターンだが、経済力と労働力がある親がいたのが娘には幸運だった。結局、悠々自適の毎日に別れをつげ子育てに明け暮れる彼であった。

ほんと、人生ってどこでどうなるかわからないよな。双六で上がったと思ったらゴールに「20個前に戻る」と書いてあったオチ。家に帰ったら先月で30才になったパラサイトシングルの娘がYouTubeを見てゲラゲラ笑っていて「そうか、俺は幸せだったのか」と思った夏の夜であった。