4月に読んだ本

語り屋カタリの推理講戯 (講談社タイガ)

近未来、なのかどうかもわからず突然に物語が始まる。競技場や建物に参加者が集められ推理合戦を行う。その様子は撮影されていて運営側が判定をするとともにネットで配信され多くの視聴者がいる。正解者、つまり勝者は1ポイント。10ポイントたまると数億円の賞金。弟の難病のために大金が必要な主人公の少女と、その少女を助ける常勝の青年、クセのあるライバル...ある状況に対して複数の探偵役が謎を解き、それを批判しあう状況を無理矢理作った作品。そこは面白いが、舞台装置が限られているのでダイナミックさに欠けるのが難点。

 

雪のマズルカ (創元推理文庫)

女性の探偵の連作短編集。同じ女探偵でも先月に紹介した若竹七海は事件に巻き込まれて右往左往するのに比べてこちらはハードボイルト。自分を守るために拳銃で犯人を射殺するのも厭わない。ミステリーとしても良くできており、これもっと読みたいな。

 

第三脳釘怪談

Kindleのセールで買った実話系ホラー短編集。第三というくらいだから三冊目なのか。昔ながらの「怪談」のテイストを強くした作品。なかなかの力量。

 

盤上に死を描く (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

老人の連続殺人事件。現場には将棋の駒が一つ残されている。その意味を解くのが前半。そして犯人を追い詰めるのが後半。たしかに前半の謎部分は画期的。だが、そんな面倒なことをいちいちするか? あとクライマックスは「ストロベリーナイト」のラストのような主人公のピンチと大捕物だが、それを書き切る筆力が作者にないのが残念。でも65才の新人作家だからしかたないか。

 

【2019年・第17回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 怪物の木こり

主人公は他人の痛みがわからないサイコパスの連続殺人鬼。殺人鬼を追う探偵じゃないよ。殺人鬼が主人公だよ。それとは別にジェイソンみたいなマスクをかぶった大男の連続殺人鬼がいて、主人公も狙われる。なぜ自分が狙われるのか、あいつは何者か。主人公の調査が始まる...設定がぶっとび過ぎ。こちらは前の作品と違ってラストもそれなりに読ませる。ただし、サイコパス対ジェイソンなのでどっちが勝っても負けても、できれば相打ちで両方死んで欲しいと読者が思ってしまうのが欠点。

 

今日、ホームレスになった 15人のサラリーマン転落人生

ホームレスにインタビューをしていると数年前までサラリーマンだったという人が少なくない。そんな15人の元サラリーマンがホームレスになるまでのドキュメント。大きく分けると原因はリストラか転職の失敗。これを読んで思うのだが、最近「終身雇用制は終わった」とか書かれているが、そもそも公務員以外の民間企業では昔から終身雇用など保障してなかった。たまたま解雇されずに定年を迎えた人が大多数だっただけ。この本で紹介されている15人はギャンブルに狂ったとかアル中だったとかではない。みんな真面目に勤めていたサラリーマン。中には年収2000万円のトレーダーだった人もいる。読み終わって言えることは、転職は特別な技術やコネを持っていなければ45才まで。ただしとにかく慎重に。管理しかできない管理職の再就職は難しい。45才を過ぎていたら定年まで会社が倒産しないこと、リストラされないことをただ祈るだけ...