実用化されたら名探偵は廃業だ

こんな記事があった。

  死者の脳から記憶を取り出すことが可能に?経験をコード化して記憶する遺伝子マーカーの存在(イスラエル研究)


  記憶は脳にはっきりと独特な遺伝子マーカーを残すそうだ。

  これはイスラエルの研究者が発見した驚きの事実で、その遺伝子マーカーを使えば

  人が死んだ後でも記憶を取り出すことができるかもしれないという。

  この技術は、警察が犯罪の犠牲者の記憶を記録・再生させるという未来への扉を開くものだ。

もちろん毒殺とか、後ろから忍び寄って頭をかち割ったら被害者は犯人を見ていないのでミステリー小説は成立する。
死刑に賛成か反対かの議論で「えん罪だったら取り返しがつかないので反対」という意見がある。上の技術とか、精度100%の嘘発見器が開発されるとか、えん罪の可能性がゼロの場合、この意見の人はどうするのだろう。死刑の議論がぶれるのが、倫理的な問題と実務の問題をごっちゃにするからだと思う。

  「倫理的に賛成ですか反対ですかか?」


    反対・・・(1)

    賛成

      「倫理的に賛成の人に聞きます。現在の手続きでの死刑には賛成ですか反対ですか?」

         賛成・・・(2)

         反対・・・(3)

えん罪を理由に死刑に反対するのは(3)の立場。倫理的には賛成だがえん罪の可能性が捨てきれない現在の裁判による死刑は反対。本人その自覚がなくてもえん罪を理由にするならこうなる。それなら上の技術とか精度100%の嘘発見器とか衆人環視での犯行なら死刑を認めなければならない。それでも反対なら(1)の立場であることを主張する倫理上の説明ができなければならない。さらにえん罪を持ち出すなら無期懲役だって執行するのは良くない。20才のときに投獄されて10年間刑務所にいて実はえん罪でした。20代の10年間を刑務所で過ごしたらその人の人生に取り返しがつかない損害を受けるだろう。罰金10万円だって執行猶予付きだって、とにかくえん罪を考えたらあらゆる刑罰は執行できなくなる。死刑はいけないが終身刑ならよいというのは、えん罪では説明できないと思う。
私の意見は過去にも書いたが(2)だ。己の死をもって償う以外には償えない罪があると思う。また終身刑には実務上の問題点がある。終身刑は見方を変えるとその人に天寿を全うさせることになる。するとガンになったら手術をしなければならないし、ボケて寝たきりになったら世話をしなければならない。実際に高齢の受刑者の世話を刑務官がしていてたいへんな労力になっていると聞いたことがある。その社会コストと、そのとき遺族は受刑者より恵まれた老後を送れるのだろうかと心配になってしまう。