12月に読んだ本

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

主人公の「死神」は、死者の魂を天上に導くのが仕事。だが現世へ強い未練や悔恨があると地縛霊となって地を彷徨ってしまう。神が新しい試みとして、死神を犬の姿に変え、死の前に自分の人生への悔恨を断ち切っておく。つまり自分が過ごした時を肯定的に見られるようにするわけだ。派遣された先はホスピス...まあ、着想は悪くないのだが軽い、どうしようもなく軽い。


あなたの隣にいる孤独

あなたの隣にいる孤独

母親と暮らす少女。彼女には戸籍がない。戸籍がないので学校にも行ってない。ある日、母親が逮捕される。その日から少女のサバイバルが始まる...あまりにも都合良く彼女の庇護者が現れるのでリアリティが無い。辻村深月の「朝が来る。」の逆バージョン。


白バイガール (実業之日本社文庫)

白バイガール (実業之日本社文庫)

白バイ警官になった主人公。不器用だが一所懸命な主人公と天才肌のライバル。もうこれだけでお腹いっぱい。先輩や上司も悲しいほどステレオタイプで、もうちょっと捻れなかったのか。クライマックスはそれなりに盛り上がるので視点を別の人にしたら小説としてもっと良くなったのではないか?


ちょっと軽すぎる小説が続いた後で安定の近藤史恵。自転車と並ぶ作者の柱であるスイーツの話。30代後半になって結婚もあきらめて気楽に暮らす主人公。初めて入った近所のカフェを切り盛りするのは昔に少しだけ主人公の会社に在籍していた女性。その女性は世界中の珍しいスイーツを見つけてきては新メニューにする。日常のちょっとした謎がそのスイーツやマスターとの会話で解けていくミステリー。いやはやうまい。どうってことない話をぐいぐい読ませる巧みさとスイーツに関する作者の蘊蓄。


ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

母親を殺して逃亡を続ける幼なじみの女性。彼女の捜索をする主人公。手がかりを得るために故郷に帰り友人を呼び出し彼女の話を聞く。そこで浮かび上がるのは自分が知らなかった彼女の姿、彼女の家族、そして友人の目を通して見た自分自身の姿...これもガッツリ系。眩しいけれどギザギザした20代の痛さ。そしてラストで判明する彼女が逃げている理由と、母親殺しの真相。さらにどんでん返し。ミステリーとしても秀逸。


実話ホラー 闇夜の訪問者 (だいわ文庫)

実話ホラー 闇夜の訪問者 (だいわ文庫)

作者は札幌で怪談バーを営んでいる。1時間に1回、小さなステージで怪談を語るそうだ。その作者の持ちネタと、そのバーに来た客から聞いた実話系怪談集。そんなバーがあるんだな。


これはスイーツと関係ない、ミステリーテイストの短編集。テイストというのは謎解きに重点を置いてなく、どの作品も人間の持つ悪意。テレビシリーズにかなり向いていると思う。


ずるい日本語

ずるい日本語

ずるい日本語を期待して読んだのだが、ぜんぜんずるくなく、少ない字数で最大の効果を上げるためのプレゼンやキャッチコピーで使うフレーズの作り方。「おまえの文章は長いだけで何が言いたいのかわからない」と叱られたことがある人にはお勧め。


2017年に読んだ良かった本(例によって2017年に刊行された本とは限らない)

  フィクション部門

    紙の動物園*1

    かがみの孤城*2

    AX*3

    サクラ咲く*4

  ノンフィクション部門

    数字・データ・統計的に正しい日本の針路*5

    ドキュメント気象遭難*6

    なるほどデザイン*7

    希望の日米新同盟と絶望の中朝同盟*8