死ぬまでにもう一度、見たい、聞きたい

AmazonとかYouTubeとかiTuneとか、映画や音楽が無尽蔵にあっても無いものは無い。あたりまえだけどな。長いこと忘れていて、ある日突然思い出した作品。明日にはまた忘れているだろうから自分の備忘録がわりに書いておく。

吉田あつ子の「悲しみは近道で」。このレコード、CDじゃなくてレコードは持っていたんだよ。もう数十年前に捨てた。デビューは1975年、作詞は阿木耀子、作曲は宇崎龍童なので期待された新人だったと思うんだ。スローバラードの名曲だった。いまでもフルコーラスで歌える。吉田あつ子はレコードのジャケット以外では見たことがないのだが、群を抜いた歌唱力だった。でもこの1曲だけで消えた。ネットなんかない時代なので私の情報源はラジオだけ。歌の番組で、デビューした新人のインタビューのコーナーがあって、吉田あつ子が登場した。大学生で軽音学部とかに所属していたような。まちがえてデビューをしてしまったので芸能活動自体に興味はなく、続けるつもりもないとすごいことを言って、インタビューをした人も困っていた。それが「へん、私の志は芸能界になんかないんだよ」と偉そうなのではなくて「すいませんすいません、デビューしちゃってすみません」的な内容だった。そんな大事な曲ならなんでちゃんと保管しておかなかったんだと思うだろうが、私の年代はメディアの革命が何度もあったのだ。まずリリースされる媒体がレコードからCDになって、でかくてかさばるオーディオも結婚したときに捨ててしまいレコードを聞く手段が無くなった。また記録媒体もカセットテープからMD、さらには媒体を特定しないデジタル音源になって、所有していた楽曲のすべてを新しい媒体に変換できなかった。♪あなたが〜たった〜それだけのことで 去って行ったなんて信じられない〜♪ 私の記憶の中だけに存在する曲だ。

これは以前に記事にしたので内容は省略する*1。このパッケージを見ると「DVD」と書いてあるのでリリースされたこともあったのだろう。問題の入力シーンをカットしてでも後世への記録としてリリースするべきである。中古はプレミアが付いて58,000円だって。さすがにそんなには出せないよ。

三島由紀夫の「潮騒」。過去に何度も映画化されている。吉永小百合山口百恵堀ちえみ...でもヒロインは海辺で育って海女さんをやっている娘だろ。どうみても吉永小百合山口百恵ではない。1971年に森谷司郎監督で「潮騒」が作られている*2。ヒロインはオーディションで選ばれた新人の小野里みどり。出演した作品はこれ一作くらいだったので写真もほとんどなくて

もちろんブサイクではないのだが山口百恵堀ちえみほどは可愛くない。でもそこがすごくリアル。役のためかもともとなのかはわからないが顔も身体もこんがり日焼けしている。さらに水泳選手型の体型。いかにも海に潜ってアワビを獲ってそうな人だった。上の写真は原作のハイライト、海辺の小屋でたき火を挟んでヒロインが「こっちに来い。火を超えてこっちに来い(うろ覚え)」と言うシーンだが、アイドル映画はここまで。だが、この映画は胸も出す。もう一度観たい映画でそういう作品が続いているが、それが目当てではないからね。むしろそういうシーンがネックになって廃盤になっているのかもしれない。いや、この「潮騒」はビデオにさえなってないから観ることは不可能だ。
この作品を観ると、何度か書いているように主役は役のイメージに合った人をオーディションで選び、回りをベテランや客を呼べる俳優で固めるべきだと思う。いまどきそんな冒険はどの映画会社でもできないだろう。ましてや製作委員会方式では監督がそれを希望しても共同出資者が反対するに違いない。望んでももう叶えられない過ぎた日の夢の話であった...