賛成と反対の非対称

香山リカとか内田樹の初期の著作はけっこう読んだし、好きだったんだよ。香山リカ先生はこの記事で取り上げているな*1。人に迷惑さえかけていなければ少しくらい他人と違っていてもだいじょうぶ、と本人や回りの人への優しい視線が良かった。内田先生も教育や道徳についていままでにない切り口の論評が好きだった。なのに二人とも政治を語ると、とたんに頭が悪い人になってしまう。この人たちの意見に賛成できないとか以前に、「頭が悪い」。「8月に読んだ本」の中の「21世紀の自由論」の中で、日本のリベラルは他国のリベラルとは異なる。日本のリベラルとは「反・政府」*2、「反権力」の人たちだ。だがこれは「政治思想」ではなくて「立場」だと書いてあって、モヤモヤしていたものがストンと頭の棚に収まった。だが、これを私自身が人に説明できるだけ咀嚼ができていない。なので、こんな例を考えてみた。
学級会で、今年の学芸会の出し物を議論している。

  A君 「合奏がいいと思います。これなら全員が舞台に上がれます」

  B君 「賛成です」

  C君 「反対です」

ここでB君とC君は逆の主張をしている。「賛成」と「反対」は反対語。どちらも一つの単語で、どちらも漢字二文字。だがB君とC君は大きな違いがある。

  B君

    立場・・・A君に賛成

    意見・・・学芸会の出し物は合奏がいいと思う

    理由・・・全員が舞台に上がれるから

  C君

    立場・・・A君に反対

    意見・・・?

    理由・・・?

B君は明示的に意見や理由を述べていないが、述べないことによってA君と同じであることを主張している。別の理由があるなら「A君に賛成です。素人が劇をやってもグダグダになるので、練習さえすれば一定の水準が出せる合奏がいいです」と述べるはずだ。ところがC君は立場を表明しただけで、なにも述べていない。ではC君がこう言ったらどうだろう?

  C君「反対です。合奏はほかのクラスもやるので合奏ばかりになってしまいます」

一見、意見のようだが

  C君

    立場・・・A君に反対

          反対の理由・・・ほかのクラスの出し物も合奏なので

    意見・・・?

    理由・・・?

彼が述べたのはA君の意見に反対する理由であって、学芸会の出し物への意見ではない。つまり「賛成」は完結した立場であるが、「反対」はそれだけでは完結していないと言える。ここまで書いて自分で読み直したら、当たり前のことを箇条書きにしただけのアホな文章だった...だが、個人のブログに書いてもアホな内容なので、これを知識人と呼ばれる人たちがテレビや新聞で主張したらもっとアホだろうと。政党や国会前のデモもそうだ。学生諸君ももっと勉強してからデモに参加しろ。「戦争反対」はカウンターにはならない。政府も自衛隊も安倍ちゃんも戦争は反対なのだ。太平洋戦争も最後まで反対していたのは軍部だ。それがなぜ開戦になってしまったのかは調べればわかるから勉強したまえ。「ボクたちは戦争に行きたくない」はもっとひどい。日本が他国に侵略されたとしても君たちを戦場に送らなくて済むようにするのが集団的自衛権だ。永世中立国のスイスになぜ徴兵制があるのかは調べれば(調べなくてもちょっと考えれば)すぐにわかるので勉強したまえ。そのうえで、政府に主張したいことがあるなら、デモはおおいにけっこう。君たち、私が採用担当者ではなくて良かったな。私が人事部だったら私の会社には絶対に入れない*3。なぜなら、よく考えないで雰囲気だけで行動する者はなにをするかわからないのでいちばん怖い。

*1:http://d.hatena.ne.jp/M14/20070730

*2:「反政府ゲリラ」とは違うという意味で「・」を付けてみた

*3:入りたいとも思わないだろうが