12月に読んだ本

1年の締めくくりは地味〜に読書感想文。私はリタイアしたら近所の小中学生相手に読書感想文ヘルパーをやりたいな。だいたい文芸評論家という読書感想文で飯を食っている人たちがいるくらいだから*1、子どもが手を出せるような簡単なものではないのだ。体育で「よおし、きょうはみんなで野球をやるぞ。まずは素振り1000本だ」と言われたら野球が嫌いになっちゃうでしょ。ただでさえ本、とくにフィクションを読むというのは多大な精神エネルギーを必要とする業(ぎょう)なので、そこに感想文を加えてどうする。素振り1000本にグランド30周のランニングを加えるようなものだ。たとえば読書と感想文を分けてしまう。読書は夏休みに5冊読んで、星1つから5つまでを付けさせクラス全員分を配布する。ほかの子どもが星5つを付けた本に興味を持って「ねえねえ、これはどういう本?」と聞きに行けばコミュニケーションも深まる。感想文の方はマンガでもアニメでも映画でもなんでもいいから、友だちにそれを勧めることを目的として、どんなストーリーでどんなところが良かったかを書かせればいいと思う。
 

まともな日本再生会議:グローバリズムの虚妄を撃つ

まともな日本再生会議:グローバリズムの虚妄を撃つ

日本に活力を取り戻しつぎの世代に引き継ぐのはグローバリズム新自由主義ではない。第一章が退屈だったのでほったらかしていたが第二章以降が面白くて一気に読んだ。この手の本でよくあるのが「その方がいいのはわかってるけど、でも無理でしょ」という結論を平気で書いているのがあるけど、これはまとも。その意味で「まともな日本再生会議」なのだ。


クイズで学ぶ 孫子

クイズで学ぶ 孫子

孫子」の思想を、現実に下された経営判断を例としてクイズ形式で学ぶもの。狙いは面白いのだが三択なので答えがすぐにわかってしまうのが難点。


2ヶ月連続で伊坂幸太郎の新作が読めるとは幸せな年末。小学生のとき同じ野球チームだった二人が謎の集団に命を狙われることに。明らかになる組織の狙い、日本の危機。鍵は彼らが小学生のときに公開中止になったヒーロー映画と、東京大空襲のときなぜか蔵王に墜落したB29...別の人が書けばラドラムの謀略小説のようなストーリーなのだが、この本は全編が伊坂節。軽い軽い。その軽い登場人物がマジになったときの心意気が読者の胸を打つ。


土漠の花

土漠の花

ソマリアの国境付近で突如、戦闘に巻き込まれる主人公たち。多勢に無勢、つぎつぎに倒れる仲間、尽きていく武器。主人公は国境にたどり着き脱出ができるのか...って、こんなの小説や映画でよくある話じゃないかと思うだろう。そのとおり。でも主人公は自衛隊なんだよ。帯に「感涙必至」とか書いてあったけど、登場人物の書き込みが浅い感じがした。泣けなかったなあ。


装丁道場―28人がデザインする『吾輩は猫である』

装丁道場―28人がデザインする『吾輩は猫である』

Amazonがあれば町の書店なんかいらないだろう、値段は同じだし書店の在庫は限られている、という人は多い。特定の作家とか話題になった本だけ読む人はそうだろう。だが、専門家でもない私がこんな本に巡り合うのは書店じゃないと無理。28人の装丁家やただのデザイナーが「吾輩は猫である」を装丁する。完成品の写真、中のディティールの写真と解説、そのデザインにした背景の説明から成る。いやいやこれは楽しいよ。猫のイラストとか、猫の足跡とかは思いつくが、実際にそれをどう具現化するか。私には想像もつかなかった切り口がつぎつぎ出てくる。


貘の檻

貘の檻

このところ純文学にシフトをしていた作者だが、いきなり初期の横溝正史テイストに戻った。まだこういう話を書けるんだ、書く気があるんだとうれしい一冊。


これで今年読んだ本が99冊。大台に到達しないところがギャグ。今年のベスト3は

  「64」(横山秀夫) 今年出た本じゃねえし

  「満願」(米澤穂信

  「絶叫委員会」(穂村弘) これも今年じゃねえ

ついでに今年観た映画のベスト3。

    「ジャッジ」

    「思春期ごっこ

    「少女は自転車に乗って」

    「マダム・イン・ニューヨーク

3つに絞れなかった...「ジャッジ」は埋もれさせるには惜しい映画。まだ見てない人はTSUTAYAへ急げ!

*1:感想だけじゃないと思うけどな