夏の映画まつり「マダム・イン・ニューヨーク」

インド映画というと登場人物がやたら踊るので有名だが、これは女性監督によるいままでのインド映画のイメージを覆す意欲作。ストーリーは単純で、なにかと夫や子どもから軽んじられている主人公の主婦。ニューヨークに住む姉の子どもが結婚式をあげることになり、結婚式に参加する夫や子どもより先に、姉の手伝いのために4週間前に単身でニューヨークに行く。彼女は英語がまったくできない。そのことで夫や子どもからバカにされてる。なんとかニューヨークに着いて姉の家に身を寄せるが、案の定、カフェでコーヒーを買うだけで大騒ぎになり悔し涙を流す。「4週間で英語が話せるようになります」という英会話学校のポスターを見て、姉には内緒でそこに通う。学校では主人公と同じく英語が話せなくて困っているフランス人、中国人、イタリア人、アフリカのどこかの国の人。だんだん英語がわかるようになるとともに、クラスメートは彼女を妻でもなく母でもなく一人の女性として接してくれることに、どんどん生き生きとしてくる主人公。最終日には卒業試験として5分間のスピーチをすることになったが、その日は結婚式の当日。さらに1週間前になったら夫と子どもも姉の家にやってきて、主人公はまた妻と母に戻る。なんとか最後まで英会話学校に行きたい、卒業試験も受けたい主人公だったが...
もう勘の良い人は卒業試験がどうなるかわかっただろう。日本ではテレビドラマにしろ映画にしろ、こういうシンプルなストーリーのドラマは作れないのだと思う。プロデューサーや脚本家のプライドが許さないだろう。1月に観たサウジアラビアの映画も単純な話だがやたら良かった。可能性があるとすれば、時代を明治とか江戸にしてしまえばいいのだ。「みおつくし料理帳」のレポでも書いたが、昔の話にしてしまえば、この時代にこんなことを考えてこんな行動をした人がいたということで見る人もすんなり入ってくる。それにしてもこの映画、インドで作られたという物珍しさだけでなく、話のテンポが秀逸。2時間があっという間に過ぎる。振り返ってみれば良かった映画はシリアスな話でもコメディでもホラーでもテンポが良いね。そして主人公、この人のきれいさが半端ない。
     
子役のころから長いことインドの映画界で頂点に立っていた人らしい。日本で言えば吉永小百合みたいな人か。結婚と同時に事実上の引退。本作は15年ぶりの映画出演ということで、なんと50才。いや、すごいよ。顔のパーツもバランスも完璧、パーフェクト。CGでもこんな完成度の高い顔面はなかなか作れないと思う。目がすごく大きいのに垂れ目というのが私には果てしなくポイントが高い。あと主人公が英会話学校に通っていることをひとりだけ知っていて、いつも主人公を助けてくれる大学生の姪っ子。
     
彼女も美人だ。フィービー・ケイツに似ているね。ラストの結婚式は泣けた泣けた。インド映画の底力を見た、お勧めの一本。