昭和歌謡大全集「岡田菜々」

いま検索したら同じ名前の人がΑκβにいるのね。偉大なアイドルに敬意を払って「二代目岡田菜々」とか「岡田八」にして欲しかった。車の中で音楽を聴いてたのよ。録音してある曲をランダムに再生するモードにしていたら岡田菜々の「そよ風と私」が流れた。歌詞の中で「おおっ」と思った部分があってきょうはそれの話。まずこの歌の詞を説明しておくと、片思いの彼と相思相愛になるまでが1番。ところが調子に乗りすぎて振られちゃったのが2番。その2番の歌詞。

     いつもの街が違って見える

     きらめき かがやき 青い風

     幸せ色に爪まで染まり

     私じゃないような私が走る

     一二の三で弾みをつけて

     せえのであなたにぶつかった

     有頂天 わがまま すり抜ける愛

この最後の行の「有頂天」。こんな言葉、平成のポップスには絶対に出てこない、そもそも死語になりかけている日本語。だが、「有頂天」「わがまま」「すり抜ける愛」の3語で物語が急転直下、初恋の歌から失恋の歌に変わる。そのキーワードが「有頂天」なのだよ。我を忘れて、回りが見えないほど一人で盛り上がる危うさ。これを3音節で見事に表わしている。これを置き換える別の言葉が思いつかない。「ハイテンション」ではマイナス面が無い。「能天気」では盛り上がり方が足りない。ここは有頂天しかないのだ。そして、このような漢語を歌詞に入れられるのは一音一音をはっきり発音する当時の歌い方あってのこと。いまのポップスのハミング唱法では聞き取れない。
この歌の動画はさすがにないだろうと探したらあったよ。たぶん「夜のヒットスタジオ」かな。後ろに三波春夫先生がいるじゃないか。動画を見てびっくりしたのが、CDを聞くと岡田菜々は実に歌が下手なのだが、生でもCD音源と変わらない。下手なりにその水準を生でも保てるのはすごくないか。