ガソリンスタンドにて

それは年末に家族で房総に行ったときのこと。あのサザエのUFOキャッチャーを目撃したあとだ。その日の行程を終えて、と言っても富浦で寿司を食って千倉でみやげを買っただけなんだが、暗くなってきたので旅館に向かった。ガソリンが1目盛りになったので途中のガソリンスタンドに寄った。「レギュラー・満タン・現金」の合い言葉を言って座席の下のレバーを引く。ガソリン注入口のボディのふたを開けるやつね。そうしたら兄さんが「開けてください」。開いてるって。もう一度レバーを引く。兄さんが「開いてないっすよ」。外に出て後ろにまわったら確かにふたが開いてない。兄さんがペンチを出してきて隙間に突っ込み開けようとしてくれたがダメ。これは困った。ただ、ここのガソリンスタンドは見るからにテクが無さそうなところなので、とりあえず旅館に行って明日はもっと大きなステーションに行ってみよう。
旅館について晩飯まで時間があったので女房と娘は温泉へ。私は寝っ転がってテレビを見た。あまちゃんの総集編をやってたよ。初めて見た。ほほう、なかなかかわいい子じゃないか。お肌がつるつるなのがいい。その翌日、旅館を出て大きいガソリンスタンドを探す。だが房総の端っこなので小さいところばっかり。とりあえず寄る。「壊れてもいいので、とにかく扉を開けてガソリンを入れてください」とおじさんに頼む。おじさんはいろいろやってたが「中のワイヤーが切れているかもしれないです。ここから信号を3つ行ったところに修理工場があるのでそこで見てもらってください」だと。私が「でも大晦日にやってますか?」「やってます(キッパリ)」と言うのでまた車を走らせる。信号を3つ行って修理工場...やっぱりやってないじゃないか。このまま給油をしないで走ると、私の車は燃費が悪いのでかなりきわどい。ああ、なんでプリウスやアクアにしなかったのだ。ぜったいにイヤだ。
これは困った。こんな房総の端っこでJAFを呼んでも到着まで1、2時間かかるのではないか? もう1軒行って、そこでダメだったらJAFを呼ぼう。そのまま走るとかなり大きいガソリンスタンド。ここは期待が持てそうだ。車を止め、女房と娘を中に残し、店員と交渉に行く。事情を説明していると、向こうから女房が「開いたわよ」と叫んでいる。なにそれ? ドライバーを隙間に突っ込んでこじ開けたと。なんで2軒のガソリンスタンドで男性がやっても開かなかったふたを女房が開けられたのだ。結局、私が「壊してもいい」と言ったのに、あとから文句をつけられるのがイヤで力を入れなかったのだな。それに比べて女房の頭の中では自動車と自転車はまったくの等価。車を洗いに行こうとすると「なんで車を洗いに行くの? 自転車を洗ったことなんかないでしょ」と言う女なのでボディに傷がつこうが、ふたが曲がろうが関係なし。
この話を会社でしたら「壊してもいいと言いながら、ホントに壊すと文句を言うお客さんがいるんですよ。M14さんはいかにもそういう人に見えるから」 ほっといてくれ