夏になったよ

いろいろ読み散らかして読了してない本が何冊か。

ベンハムの独楽

ベンハムの独楽

ワゴンセールで300円(笑)どんな話だったかまったく記憶になし。たしか意外な展開の短編集だったと思う。ワゴンセールで見かけたら買って損は無し。ただしワゴンセールでだ。


セイギのチカラ (宝島社文庫)

セイギのチカラ (宝島社文庫)

まったく役に立たないプチ超能力を持った5人?(人数は忘れた)。初めはただの寄り合いだったが陰謀に巻き込まれていく。後半の展開は好き好きがあるのではないか。私はあくまでもプチ超能力をうまく組み合わせてスパイ大作戦的な物語を望んでいたのだが...それがお好きな方は山田正紀「火神を盗め」、伊坂幸太郎「PK」を読むべし。


火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)

火星ダーク・バラード (ハルキ文庫)

このところ女性作家のデビュー作を読んでがっかりし、数作目を読んで成長ぶりにびっくりという体験を何度かした。これは上田早夕里が小松左京賞を獲ったデビュー作だそうだ。さて、どんなだろう。うっ、いきなり巧い。切な系SFホラーというジャンルを確立した作者だが、デビュー作はハードボイルド。やはり異才はデビューからすごかった。いくつかの設定を除けばとくに火星である必要もなく、現代の地球を舞台にしても物語は成立する。だが、作者が火星を舞台に選んだのは主人公はヒロインが持つ、まだ行ったことがない故郷の星への望郷。楽な人生を選べない主人公の虚無感が全編に静かな哀しさを漂わせる。やはり上田早夕里とKalafina泉里香は日本の宝だと思う。


ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟

主人公たちの人生相談で救われ再生する人々。ただし主人公たちは賢者ではない。人間的にはむしろ平均以下、ただのコソ泥なのである。その代わり、未来を知っている。正確には過去を生きる人に現代を生きる主人公がアドバイスをすることができる。現実にはありえない設定をひとつだけ入れて、あとは徹底的にリアルに物語を作る。作者がよく使う作風だ。以前にSF短編集「NOVA」の感想で、国産SFの新しい可能性を感じたと書いた。我々が生きる現代に、非現実的な設定を一つか二つだけ入れて物語を紡ぐ。日本の作家はこれがうまい。逆にここではないどこか、いまではないいつかを舞台にして、現代的な物語を作る方法がある。たとえばスター・ウォーズは舞台はどこかの天体だが、物語は西部劇とか中世の騎士物語だよね。同じ手法で日本的な時代劇を写像したSFが作れないのか。


夢違

夢違

ひさしぶりに読んだ恩田陸。おどろおどろしさは健在。突然に小学生の1クラスがパニックを起こし、すぐに収まるが誰も何があったか覚えていない。その日から子どもは悪夢に襲われるが、どんな夢だったか朝になると忘れている。この現象がまったく関連のない地域で頻発する。この作品も上で紹介した小説と同様に現代にはないテクノロジーをひとつだけ設定する。夢を記録し再生することができる機械が発明されるのだが、それがあったら何が起こるかという作者の想像力。いったい怪現象の正体は何か、そもそもこの小説はどういう話なのか、最終章のひとつ手前までわからない。物語はひたすら鬱々展開。ラストはバッドエンドなんだけど、最後の1行でちょっと救われる。


惨劇アルバム (光文社文庫)

惨劇アルバム (光文社文庫)

ある家族の連作短編集。話ごとに主人公が変わり、主人公の口から別の話の登場人物の名前がちょっとだけ語られるのでかろうじて連作だとわかる程度で、まったく独立した短編集だと思ったら、最後の話ですべての話が一気につながる。作者得意のスプラッター系ホラー小説。