6月に読んだ本

日本を讒(ざん)する人々

日本を讒(ざん)する人々

自虐史観と平謝り外交を憂う3人の対談集。いきなりこの本を読んでも論者が何を憤っているのかわからないと思う。序章として昭和史がどう書き換えられたのかの解説がいるのではないか。いや、それが必要な読者はそもそも想定してないか。私もBOOKOFFで買ったのだし。


哲学のモンダイ

哲学のモンダイ

哲学の基本テーマについてコミックや映画を題材にして解説する良書。それにしても漢字にいちいちふりがなが振ってあるのはどうよ。このくらいの漢字が読めない学生はそもそもこんな本は読まないと思うぞ。


小川洋子の偏愛短篇箱

小川洋子の偏愛短篇箱

変なものに恋心を抱いた人のアンソロジーである「変愛小説集」というのは以前に紹介した。これはそういうものかと思って、よくタイトルを見たら「偏愛」。たとえ他人の理解が得られなくても編者が愛してやまない短編を集めたもの。第1話が江戸川乱歩の「押し絵と旅する人」なので傾向がわかるというもの。


湾岸戦争の戦後処理に自衛隊が初めて海外派遣されたときの「ヒゲの隊長」を覚えているだろうか。日本ではニュースにならなかったし、この本にも書いてないが地元では「日本の自衛隊、帰らないでくれ」とデモ行進が起こったほどの人気だったそうだ。その隊長、いまは国会議員で、今回の震災では被災地を精力的に回って民主党が手を付けてない支援や法案に尽力されている。この人のツイッターが、マスコミが取り上げない現地の窮状や問題点がよくわかり読み応えがある。


ツナグ

ツナグ

この人の過去の作品の感想、私はだいたいけなしている。人物模写が浅いので感情移入ができない、ラストの風呂敷を畳む部分を書ききるだけの筆力がない、繊細で傷つきやすいのに他人を傷つけることに鈍感な登場人物が気持ち悪いetc...帯に吉川英治文学新人賞受賞とか直木賞候補とか書いてあるから、日本の文学界はどんだけ人材不足だよと思ったら...別人だ。作風がガラっと変わって怖ろしくうまくなっている。テーマはけっこう使い古されている嫌いはあるが、それが気にならないほどうまい。最終話はもうちょっとがんばって欲しかった。


あした咲く蕾

あした咲く蕾

対してこの人はもう横綱相撲というかいぶし銀というか。どの話も怪異現象とか登場人物が常人にない能力を持っているのだが、それはテーマでは無くただのきっかけにすぎない。梶尾真治がSFの味付けの切ない話なら、この人はホラーを軽くふりかけた切ない話なんだな。


現代百物語 嘘実 (角川ホラー文庫)

現代百物語 嘘実 (角川ホラー文庫)

薄い本だが、見開き2ページで1話、ぜんぶで99話が入っている。百にしてないのが、百話を読むと怪異が起こると昔から言われているから。今回は幽霊はほとんど出てこないで、すべてふつうの人間。ふつうの人間だが、嘘をつくことになんの罪悪感も持たない人の話。これだけで100個も怖い話を集められたものだ。やはり人間がいちばん怖い。


博士の奇妙な成熟 サブカルチャーと社会精神病理

博士の奇妙な成熟 サブカルチャーと社会精神病理

サブタイトルどおり、オタク、ロリコン、追っかけなどサブカルチャーのキーワードと精神病理との関係を集めた論説集。後半はサブカルチャーと関係なくなっちゃうがロリコンに関する論説は目から鱗が落ちる。長くなるので書かないが、要するにロリコンは無害だ。


日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)

タイトルはちょっと極端かもしれないが、それほどまちがってないことは各種の統計資料が示している。日本人よ、もっとこの国を愛して自信を持とう。


造花の蜜

造花の蜜

この人の本はひさしぶりに読んだが、とにかくうまい。誘拐事件が起こるが、人質の子どもは返ってきて、用意された身代金も取られてない。かといって用意周到でいろいろな仕掛けをしていた犯人はなにかに失敗したとも思えない。そもそもこの事件はなんだったのか。犯人はなんのためにこんなことをしたのか。どう? 読みたくなったでしょ。