3月に読んだ本

3月はここ数ヶ月にない低水準。もう行きも帰りも電車の中でほとんど寝てたよ。座席に座れれば寝てるし、座れなくてもつり革につかまって立ち寝。計画停電が始まった週は自宅待機になった会社が多くて電車が空いてたというのもある。

差別感情の哲学

差別感情の哲学

まず差別感情はどこから来るか。相手に対する「不快」「嫌悪」「軽蔑」「恐怖」、自分に対する「誇り」「自尊心」「帰属意識」「向上心」に分類し、一つ一つ考察して行く。ただし著者は、これらを否定しない。この感情は人間としてしかたないもの、そして人間の人生を豊かにするものであると。その上で、この感情とどう折り合いをつけて人間関係を構築し社会を形成していけばよいかを考える。この本の中で「そうだよ!」と思わず居住まいを正してしまった記述がこれだ。

  他人に嫌われたくないという感情が極端に強い人は反省すべきであろう。

  それは何の美徳でもなく、ただ人間として幼いのであり、むしろ社会に果てしなく害毒を流す。

  人間とは理不尽に他人を嫌うものであり、それを呑み込まなければ生きていけない。

  (中略)

  われわれは他人から理不尽に嫌われることに対する抵抗力を身につけなければならず、

  そうした抵抗力のある者だけが、現実的に差別感情に立ち向かうことができるのである。

社内の嫌われ者である私に勇気を与えてくれる言葉だ*1


ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)

もともとティーンズノベルだった著者のデビュー作を大幅に加筆訂正した復刻版。でもやっぱりティーンズノベルなんだよな。


誘拐の誤差 (双葉文庫)

誘拐の誤差 (双葉文庫)

帯には「新感覚の警察小説」とか「著者の新境地」とか書かれていた。著者の作品は必ず「どうしようもないバカ」が出てくる。バカなので、他人に迷惑をかけるし、自分自身も損をしている。帯の文句からするとそういう話では無い、まったく違うストーリーなんだろうなと思って読み進める...やっぱり全員が「バカ」だった。バカはとくに動機においてバカである。たとえ言動はまともでもその動機やそこに至る思考がバカなのである。他人の頭の中はわからないのでそれを記述するには三人称を用いなければならないが、この作品は意外な設定を使って一人称を実現している。技ありの一冊。


FBIアカデミーで教える心理交渉術 (BEST OF BUSINESS)

FBIアカデミーで教える心理交渉術 (BEST OF BUSINESS)

この本、だいぶ前に衝動買いしたんだけどなんか読む気がしなくてずっと本棚に眠ってたんだ。だが「FBI」「心理」とくれば「LADY」だろう。やはり「LADY」を100%楽しむには、北川景子にもっと近づくにはこの本を読破しなければならない。きっとサイコキラーのファンタジーとかの話なんだろうな。と思ったらぜんぜん違った。人との折衝や交渉を有利に導くノウハウを得意とする著者が、FBIで講師をしたことがあるというだけのことだった。ファンタジーの話じゃなかったよ。


俺、リフレ

俺、リフレ

変な話のデパートである著者、今度の話は主人公が冷蔵庫。冷蔵庫なんで動くことも話すこともできない、冷蔵庫だから。だがなぜか思考することができる。そんな冷蔵庫から見た若夫婦の話。親戚の子どもを預かることになったところから物語が始まり、いろいろあって奥さんは心の病になる。奥さんの狂気や、バイオリニストの夢に挫折する子ども。追い詰められた旦那もまた狂気の淵に追い詰められていく。なんとか一家を救いたい。だが冷蔵庫だから何もできない。唯一できることは...最後はバイオリンの調べに乗って静かな感動が流れる佳作。


女修行 (講談社文庫)

女修行 (講談社文庫)

なめ子姉さんが、イイ女になるためにいろんなことに挑戦する。とは言ってもそれほどうまく行かず著者の被虐節が爆発。この人は無理にウケを狙わず淡々とした文章がなんともいえない味。


左手の記憶 (ふしぎ文学館)

左手の記憶 (ふしぎ文学館)

過去に一冊くらいは読んだことがあるんだよね。でもこの人の著作をぜんぶ読もうとは思わなかった。その程度だったのだが、古本屋で買った著者の短編集。いやはや、うまい。この人はこんなに上手な作家だったのか。それともあれから成長したのか、それともこの人は短編の人なのか。なにしろ最後の1ページまでオチが見えない。だが、オチがわかると途中にちゃんと伏線が張られていたのに気づく。だいたいホラー系の話は結末が予想できるものだが、どれも読者の予想を裏切るというか、この話にオチが存在するのかとさえ思って読み進めると最後にストンと落とされる。ちなみにこの人の旦那は叙述トリックの第一人者の折原一

*1:おまえは嫌われる理由をもう少し考えた方がいい