安座間美優「女性ファッション誌に未来はあるのか」

カテゴリを考えるのがめんどくさいのでセーラームーンにしたが、安座間美優と直接は関係ないです。老舗の女性ファッション誌の売り上げが落ちているとは聞いているが、実際のところどのくらい落ちているのか。日本雑誌協会のサイトで調べてみた*1。10月から12月の3ヶ月について、2008年から2010年の3年間をプロットすると右のグラフとなる。ううっ、これはひどい。漢館の一人負けだ。左の目盛りの単位は発行部数を10万冊単位で表わしている。つまり漢館は2008年の10-12月は47万部だったのが、去年は32万部になっている。4割近くの減少だ。他誌の落ち方はもっと緩やかなので2009年には微々に抜かれている。微々は44万部から41万部でわずか7%の減。漢館はこの3年で落ちたというよりエピちゃん人気で2008年より前に急上昇したのが元に戻ったのではないか。だから安座間美優の責任じゃないぞ。安座間美優がいなかったらいまごろは霊に抜かれていただろう*2
それに対して泉里香を擁する霊は、2010年に痔嬰痔嬰を抜いている。霊は20万部から17万部で15%減、痔嬰痔嬰は22万部から16万部で28%減。あくまで発行部数なので、霊は異様に返品が多いということなら読者数はこの限りではないがな。品奇異なんか2009年に発行部数を伸ばして霊や痔嬰痔嬰を抜いたのに廃刊だ。
こうして見ると、泉里香が霊の専属モデルになり、北川景子も定期的に同誌の表紙になっているのは目が高い。私が自身の読書案内にしている「本の雑誌」に痔嬰痔嬰の編集長のインタビューが載っていた。たいへん興味深い内容だったので紹介したい。

  いまファッションブランドって自社で24ページくらいの立派な冊子を作っているんですよ。

  一流のモデルを使って、一流のカメラマンが撮影している。

  (中略)

  だから、お買い物の副読本、参考書という機能だけじゃ女のコの雑誌はダメになっちゃうな(と気づいた)

ファッション誌がどんどんカタログ化すると、カタログに負ける。もう笑い話、いや悲喜劇であろう。だが、ぜんぶのカタログを集めるわけにはいかないから、やはりカタログ誌としてのファッション誌に存在意義はあるのではないのか。編集長はさらに語る。

  最近はモデルの魔法が解けてきているんじゃないか。

  私はどう転んだってエピちゃんにはなれないもんねって

たしかに安座間美優がウォーキング天気で着ている服、会社の女性社員で似合いそうなものはわずかだ。同じ安座間美優なら漢館よりニッセンのカタログにシンパシーを感じる。しかし、「そうでもないよ、あなたたちだって似合うよ」というメッセージとして読者モデルがいるんじゃないのか?

  読者モデルにしても、親が金持ちでこんなにブランドバックを持ってます、

  というのがステータスになっていたんですけど、

  こういう時代になると物持ちにシンパシーがわかなくなる。

素人も20代後半、30才近くになれば「がむしゃらに働いて高収入になったので、こんなにブランド品を買えました」という人は少なくないだろう。だが、読者モデルになる20代前半でブランド品をたくさん持っている人は親が金持ちなのだ。ヘタすると読者モデルは安座間美優やあいくより金持ちかもしれない。少なくとも泉里香よりは金を持ってそうだ。

  痔嬰痔嬰の36年の歴史はコンサバディブでお嬢様でエレガンス。

  ブランド品に囲まれて素敵なくらしをするといいことがあるよ、

  というのがメッセージだったわけですよ。

  だけどミックスコーディネートで何でもありの時代に、

  髪の毛くるくる巻いてエレガンスな格好をしましょうという誌面を作っていたら

  それこそシーラカンスになっちゃう。

  老舗だからこそアップデートしていかないと生き残っていけない

こうなると、自誌の歴史の自己否定だ。だが、それができなければ進歩はない。進歩どころか置き去りだ。ファッション誌に限らずビジネスは下りのエスカレータを駆け上っていくようなものなのだ。本当につらい。安住の地なんかない。痔嬰痔嬰でいま人気があるコーナーが「おしゃれプロデューサーズ」。これは読者モデルをもう一歩すすめて、アパレルのデザイナーやプレスを素人モデルにして生活感がある写真を載せる。そこから、この子が好き、この子のライフスタイルが好き、だからこの子が作っているブランドの服を買うという消費動向を狙うのだそうだ。美優ちゃんが着ている服を私も着たい、ではなくて、この人が作っている服なら私も着たい。こうなるとファッションモデルさえ否定してしまっている。付録合戦に白熱するファッション誌業界にもこういう編集長がいるのだな。では、この編集長、付録のことはどう考えているのか。

  意地でも付録はつけない!

  付録っていうのは覚醒剤と一緒で、どんどん強いものを打たないと麻痺してきます。

  それに、ある日突然、あれを持っていることが恥ずかしいと(読者が)気がつきますよ

私もまったく同意見だ。こうして編集長の意見を読むと、漢館がひどくどっちつかずの感じがしてくる。安座間美優の明日はどっちだ!