名前について考える

【レベル3】社会性
子どもに名前を付けるときに考えなければならないのは、これから付ける名前はその子どもの物ではないということだ。たとえば無人島にひとりで暮らしている。その場合、名前はいらない。「オレ」でいいわけだ。二人で暮らしている場合も名前はいらない。「オレ」と「オマエ」で用が足りる。5人くらいでもいらないかもしれない。「ハグキ」「ペチャパイ」「ヨガ」「テンキ」「ボヤキ」で互いを識別できる。ところが数百人になったらより抽象的な記号をインデックスにしたほうがかえって都合が良いのだ。それが名前である。つまり

  名前はその子のために必要なのではなく、

  第三者がその子をその他大勢の中から識別するときに必要なのである

これを言い換えると

  世間の皆様、うちの子をこういう名前で呼んでください

それが名前である。そう考えると

  読めない名前は名前として機能していない

と言って良い。だから

  袖姫 ・・・ ゆめ

  香華 ・・・ このは

のような名前は付けるべきではない。
【レベル2】文脈
名前は相手を呼ぶときに使う。「美優!」とか「景子!」とかだ。それだけなら「ローズマリー!」とか「セバスチャン!」という名前を付けてもいいかもしれない。もう一つのシチュエーションを考えると、その名前は日本語の文脈の中で語られる。

  きのうはすごくヒマだったので、いつもヒマな美優を呼び出してお茶しました

のようにだ。すると、日本語としてあまり馴染みのない語幹の名前は避けた方がいい。なにより名字と合わない。なので

  心愛 ・・・ ここあ

  瑠愛 ・・・ るあ

のような名前は避けた方がいい。この2つはレベル3においても失格である。
【レベル1】日本語
日本語には50音表というのがある。江戸の終わりか明治になってかは知らないが、「aiueo」の母音と「akstnhmyrw」の子音から成るマトリクスに表記したものだ。だが、この50音表に基づいて言葉が作られたわけではない。はじめに言葉があったのだ。

  華子はペチャパイ

  華子はデッパ

この「ペチャパイ」と「デッパ」に共通の音である「パ」の存在に気がついて、言葉を構成する最小要素の音を整理して作られたのが50音表である。したがって、たしかに音を組み合わせればどんな言葉でも作ることができるが、日本人の脳の深いところで許容できる音の組み合わせと許容できない音の組み合わせがあるのだ。よって

  葵碧 ・・・ びゅぺ

は、レベル3やレベル2はもちろん、人間が発語してはならない神の音とか死霊の音に分類される音なのではないかと思う。なお、例に挙げた名前はすべて実在することを付け加えておこう*1。いま話題になってます*2