7月に読んだ本

るり姉

るり姉

帯に「絶対に泣ける!」と書いてあったのに泣けなかった。いい話だとは思うんだ。姉妹、母親、姉妹の叔母である「るり姉」の夫の目から見た家族の話が、どんどん時間をさかのぼって語られる連作短編集。最後にサプライズが用意されている。予想はできちゃったけど。うん、いい話なんだ。だけど帯に「絶対に泣ける!」と書いてあるのに泣けなかった点ですべてを台無しにしている(変なところで厳しくないか?)。


私の嫌いな10の人びと

私の嫌いな10の人びと

笑顔の絶えない人、みんなの喜ぶ顔が見たい人、「わが人生に悔いはない」と思っている人、これらのちょっと見は立派な人がいかに嫌な人であるかを説く中島節が炸裂。この人の「哲学の教科書―思索のダンディズムを磨く」は読んで損は無し。


天使のナイフ (講談社文庫)

天使のナイフ (講談社文庫)

内容をすっかり忘れちゃったよ。たしか奥さんと子どもを未成年の集団に殺された男がいる。その男はいまだに心の傷が癒えないが、少年たちは1年くらいの保護期間が終わって社会に戻っている。彼らがひとりずつ殺されて...という話だったような。で、どんでん返しが何度もあったような。


粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

粘膜兄弟 (角川ホラー文庫)

粘膜シリーズ3作目。すごいシリーズだが。前作はヌメヌメ系ホラー+冒険活劇だったが、本作はホラー色が薄れ冒険活劇になっている。だが、どこか狂っている登場人物はあいかわらず。その狂いっぷりが痛快。次作はぜひ粘膜姉妹をお願いしたい。AVのタイトルでありそうだな。


サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

今年に読んだ本でこれがいちばんかもしれない。最近のスポーツ小説の傑作はすべて女性作家だと以前に書いたが、これは自転車ね。知らなかった、自転車競技ってヨーロッパ紳士のスポーツなのね。ぜったいにアメリカや中国には根付かない気がする。マラソンでも先頭を走ると風を受けて余分なエネルギーを使うでしょ。その何倍ものスピードの自転車は先頭を走るのがすごく大変なわけ。ところが自転車の場合、先頭集団を走っている敵同士が順番に先頭を入れ替わる。べつにそうしなくても反則ではないが、それをしない人には出場する資格なし。そんなところに引かれて陸上競技でオリンピックさえ期待された主人公が自転車に転向する。長くなるので書かないが、ひたすら静かに、淡々と物語が展開し深い哀しみで幕切れとなる。と思ったら、残り30ページで突然、ミステリー小説になる。なに! これはスポーツ小説ではなくてミステリーだったのか。残り20ページでどんでん返しが2回、残り10ページで被害者の意外な意図が判明し、それはまさに自転車競技におけるスポーツマンシップであったと。うーん、これはすごい。すぐに続編を買いに行ったよ。


図説・現代哲学で考える「表現・テキスト・解釈」 (京大人気講義シリーズ)

図説・現代哲学で考える「表現・テキスト・解釈」 (京大人気講義シリーズ)

違った、期待した内容と違った。この分別を持たなければいつまでたっても貯金が増えない


アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

以前に紹介したシリーズの3作目*1。なにしろ1作目が刊行されたのが1984年、2作目が1999年、3作目が2009年。覚えてねえよ、前作のあらすじを。これだけ間が空いたら、2作目は1作目との合本、3作目は1作目と2作目の合本にしてもファンの人は誰も文句を言わないと思う。掲載誌を見るとSFマガジンに1、2年に1回、単行本の1章分が掲載されている。ますますわからないだろ。連作短編集ってほど章が独立してない、完全な長編小説なのだよ。さて、この3作目、残念ながら雪風の胸の空くような空中戦は無い。敵のある特殊な攻撃によって実在論的な迷宮に入り込むことになる。おかげで読了するのに思ったより時間がかかった。最後に読者サービス的なシーンがあったりする。


電氣人?の虞

電氣人?の虞

前作のレポを書いたとき、この作者に期待するみたいなことを書いたが、期待はずれだったよ。もっとがんばろう。


反社会学講座 (ちくま文庫)

反社会学講座 (ちくま文庫)

買ったまま放置していた本だが、面白いじゃないか。先月に紹介した本と似ているが、マスコミが当然のごとく語っている「外国は良くて日本はダメ」「昔の人は偉かったけどいまの若者はダメ」を一つ一つデータで根拠を示しながら反証をし、いじっていくところが痛快。結論をある方向に持って行きたくてあえて統計の一部を隠すとか、どこかを誇張するという手は私も使う(ヲイ)。だが、マスコミはこれによって世論をどうしたいんだろう。国民に何を訴え、日本をどうしたいんだろう。新聞やニュースよりB∪BKAのがよほど罪が軽いように思う。


「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

そうなんだよ、休職しているおまえらの傷病見舞金(基本給の60%)を稼ぐために俺は必死で働いているのか。精神科医のリカ先生は彼らを「うつ病セレブ」と断罪する。そして彼らにいとも簡単にうつ病の診断書を書く精神科医を断罪する。彼らのためにガチのうつ病で苦しんでいる人たちがどれほど迷惑していることか。この前、休職している奴に業務連絡で電話したら「最近、フィットネスクラブに通い始めたんですよ。もう絶好調です。ハハハ」...そんなに元気なら会社に出てきて仕事しろ! またはフィットネスクラブに転職してくれ。て、こんなことを書くと、身の回りに新型うつ病がいない人は私のことを鬼と思うだろうな。でも会社から一歩離れるといたって元気なこの人たちを雇用しつづける意味を、職場も人事部も産業医も見いだせてないんだよね。もうほんと、ロシアンルーレットみたいなものだから、私のことを鬼だと思っている君、このルーレットを引き当てたら私と語り合おう。