6月に読んだ本

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

経済政策、高齢者や少子化問題、国際競争力など政府やマスコミの主張やそこで示されるデータを一つ一つ検証し諸外国と比較しながら統計的手法と経済学思考で覆す。この本によると、マスコミが言うほど悲観的ではないが、政府が言うほどは楽観的でない。私は老い先が短くて良かったなあ。

美月の残香 (光文社文庫)

美月の残香 (光文社文庫)

期待の新人・上田早夕里の初期の長編。この人が得意のSFホラーではなく、ジャンルを考えれば恋愛ミステリーか。大きな事件が起こるわけではないのに最後までグイグイ引っ張る筆力はさすが。最後のどんでんがえしも技あり。

日本力

日本力

日本を考える松岡正剛の対談集。相手は日本に住む外国人(いや、ただの外国人ではないのだが忘れてしまった)。この人によれば日本の文化や日本人の心の持ち方は江戸時代に最盛期を迎え、あとは下がるばかりだと。やたら自虐的な論調を繰り返し何の方向性も示さないマスコミと違い、著者は日本人のベースはこうだったんです、だからできるはずですよと希望がある。ああ、私は江戸時代の越後屋の道楽息子に生まれたかったよ。

「伝わる」のルール 体験でコミュニケーションをデザインする

「伝わる」のルール 体験でコミュニケーションをデザインする

著者は国際的に有名なクリエーター。この人が主催しているセミナーで、あるテーマに対してどういう宣伝活動をするかを生徒に考えさせ、著者が批評する。非常に具体的でおもしろい。ただ、字が大きくて厚い紙を使っているのですぐに読み終わっちゃったよ。

セピア色の凄惨 (光文社文庫)

セピア色の凄惨 (光文社文庫)

ヌメヌメ系ホラーの元祖である小林泰三の短編集。著者独特のヌメヌメ度は健在。この人の本をひさしぶりに読んだが、けっこう著者の亜流の作家が多いのに気づく。いや、亜流と言ってしまったら身も蓋もないか。それほど、この人がパイオニアだったと言うことなのだが。

天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

同じ小林泰三のSF短編集。まあ、舞台が宇宙や未来になっているだけで方向性は上の作品と同じ。舞台設定はわからないまま話が進み、最終的な結末が描かれないまま話が終わるのが多くて、けっこうストレスが。そこが狙いなのだろうが。

怪物團―異形コレクション (光文社文庫)

怪物團―異形コレクション (光文社文庫)

異形コレクション、これで何冊目だ。ぜんぶ読んでいる私も立派だが、数十巻になるのにクオリティが落ちてない編者の力とこれに賛同して話を書いてくる作家はどちらも立派。ただ、最近のは一つの話が長くて寝る前に読み切れないのが難点。

怖い絵3

怖い絵3

怖い絵シリーズの3冊目。いちおう最終巻となっている。怖い絵と言ってもホラーとは関係なく、西洋絵画の中から描かれている人物や情景が怖いものについて、その時代背景を解説する。それにしても筆者の博識の広さと深さのがよほど怖い。この本を通じて言えるのは、先進国の市民にとって死が身近でない存在になってまだ100年にも満たないこと。もちろんいまでも内戦や貧困で国民がバタバタ死んでいる国はあるのだが、ヨーロッパだってつい100年前までは死が隣り合わせだったのだよね。

臨床哲学の知 ~臨床としての精神病理学のために

臨床哲学の知 ~臨床としての精神病理学のために

筆者は精神科医だが、統合失調症の研究を進めると最後は自分とは何か、自分が認識している世界はどう存在しているのかという実在論と同じテーマに行くつく。この精神医学と哲学のすきまを埋める著作を多数出していて、なにより著者の論理の展開のしかたが気持ちいい。なにかの主張があって、私が「でもこういう反論が成り立つんじゃないの」と思うと、つぎにその反論がちゃんと検証されている。世の中にはすごい先生がいるものだ。

夜行観覧車

夜行観覧車

原作の映画がヒットしている湊かなえ。私がたびたび主張している「湊かなえ交互説」、つまり傑作と凡作が交互に刊行されるという説が正しいなら本作は傑作のはずだが...いまいちだった。連作の体裁をとり事件の関係者の視点を替えながら全体を浮き彫りにするというスタイルはいつもどおりなのだが、前作と同じその事件にドラマ性が無さ過ぎて全貌が明らかになっても驚きが無いというか。次回作に期待しよう。

シャトゥーン ヒグマの森 (宝島SUGOI文庫) (宝島社文庫)

シャトゥーン ヒグマの森 (宝島SUGOI文庫) (宝島社文庫)

クマってかわいいイメージがあるでしょ。でもヒグマって怖いんだね。この本を読んでわかったよ。大きいものだと体重400kg以上。100mを6、7秒で走り、木に登り川を泳ぐ。ライオンやトラのように噛みつくのはもちろんだが、長い爪という武器があり、陸上で最強の動物。登場人物がつぎつぎと行きながらヒグマに食い殺される。しかも腕や足をもがれたり内臓を引っ張りだされてもなかなか死なない。ああ、やだやだ