5月に読んだ本

たった5冊だったよ。通勤電車では行きも帰りもほとんど寝てたからなあ。しかもこの5冊はどれも読み出があるんだよね。

ひとり百物語 怪談実話集 (幽ブックス)

ひとり百物語 怪談実話集 (幽ブックス)

ショートショートの実話系。だがこのスタイルだとどうしてもショート系怪談実話の金字塔「新耳袋」と比較されてしまう。たとえば、この作者の話はどれも最後の1行が冗長。だがそれはこの作者のスタイルであり冗長ということ自体が的外れであるのはわかっているのだが...それほど新耳袋が偉大であったということか。ラーメンなんかでもどこかの有名店に味が似ていると、そこと違う部分が本来なら個性であり持ち味のはずなのだが、欠点に思えてしまうでしょ。だが、後発はそれを超えることが宿命なのではないか。作者の今後に期待する。


遙か南へ (文春文庫)

遙か南へ (文春文庫)

BOOKOFFで買ったのはそうとう前、軽く5年以上前だよ。ずっと奥にしまってあったが、なんだよ、もっと早く読めば良かった。作者はキング、クーンツと並ぶモダンホラーの旗手として期待されてた人だったのに、脱ホラー宣言をしちゃったんだよね。その「少年時代」につづく2作目。いや、おもしろいよ。うまいね。はからずも殺人を犯してしまった主人公が、警察、賞金稼ぎの追撃から逃れながら旅をする。途中であった顔半分に醜い痣のある少女と合流し、どんな病も治癒するという不思議な女性に会うために。分厚い本なんだけど飽きない。ラストはなんとなく予想がついちゃったけど、これを日本の作家が書いたらこういうラストにしないだろうな。


現代霊性論

現代霊性論

私の定番・内田樹の最近の著作。今回は宗教についての対談集。対談集といっても対談になってねえじゃん。交互に自分の意見を長々と論じているというか。


オー!ファーザー

オー!ファーザー

伊坂幸太郎の新作。主人公は母親と4人の父親といっしょに住んでいる。あいかわらずの伊坂節。物語の2/3くらいまで、これはいったい何の話なのか、何がクライマックスになってどういう着地をするのかがまったく見えない。それでいて主人公の回りで起こる小さな出来事やそれに対する主人公や彼の友だち、そして4人の父親の反応やかかわりがおかしくて飽きない。ところがどっこい、その小さなエピソードや途中のなにげない会話がすべて最後に結びついてくるんだよ。無駄な話が一つもない、すべてクライマックスを形作るパズルのピースになっている。
ところで4人の父親というとこの本を思い出した。
  
イローナの四人の父親 (新潮文庫)

イローナの四人の父親 (新潮文庫)

もう20年近く前の出版だが、この4人の父親はCIA、KGB、MI6、モサドのスパイ。誰が本当の父親かわからない。その娘がテロ組織に誘拐される。ふだんは敵対している4人の父親は娘のためにいやいや強力して組織の壊滅と娘の救出に乗り出す。どう? これだけで読んでみたくなったでしょ。最近のハリウッド映画はネタ切れが甚だしく、ド派手な映像だけで2時間お茶を濁しているけど、まだまだ映画向きの本ってたくさんあるんだけどね。あと「シャドー81」「超音速漂流」なんかもいまのCG技術を使えばワクワクする映画になるんだがなあ。国内でも山田正紀の初期の冒険物はかなり映画向きだと思うのだが。


黒い本〈2〉―「超」怖い物語 (竹書房文庫)

黒い本〈2〉―「超」怖い物語 (竹書房文庫)

まあ、可もなく不可もなくと言うか。でもホラーはハズレが多いから、可もなく不可もないのは良作の部類に入るか