北川景子「大女優への道」−今度こそ「筆談ホステス」レポ

  主演 安倍麻美「独断ホステス」

やたら親切なホステス。指名をしてもほとんど隣に座ってないで、奥に引っ込んで料理を作ってくれたり、ティッシュの箱で工作をしたり、客のコートのほころびを縫ってくれたり落ち着きがない。やっと座ったかと思うとオカリナを吹いたり詩を朗読したり歌を歌ったり。酒をすすめる暇がないので売り上げはいつもビリ。

  主演 ゾイサイト「連弾ホスト」

客とピアノの連弾をしてくれる音大生御用達のホスト。白い手袋をしたまま演奏をするテクニックはなかなかのものであるが、客がまちがえるとボコボコにするので評判はよろしくない。
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うそうそ、ここからが本当のレポだから。こんな記事があったのだよ*1。だがこれは野暮というものだろう。この人は読唇ができるので接客はオーラルコミュニケーションが中心だと。そりゃそうだよ、だってあのドラマで高校生時代の北川景子は普通の高校に行ってたじゃないか。あと、日本一には程遠く、店でNo1になったのも1回しかないというのも、むしろ聴覚障害者の人がホステスを続けられていることに、同じ障害を持った人がどれだけ励まされているか。さらに、この人のストーリーは芸能事務所が作った虚像である云々も、この人をホステス兼タレント兼著述家と考えれば十分に立派な人であるわけだ。せっかくの北川景子の好演に水を差すのはやめよう。また、打算はあったかもしれないが、この人が一人前のホステスになるまで面倒を見た回りの人がエラい。でもよく考えたら、こんなホステスさんがいたら高級店であるほど客が気を使うでしょ。世の中にはハンディキャップがありながら、この人よりもっと厳しい環境で我々と同じように、いや我々よりはるかに立派に働いている人もたくさんいるのだよね。
さて、このドラマの話があったとき私は「セリフがない北川景子はいい演技をするはずだ」と霊視をしたが、そのとおりなかなか良かったんでないかい。あいかわらず泣き顔で顔面崩壊の顔芸を見せていたけど、自分の声が聞こえない聴覚に障害がある人はああいう泣き方をする人がいるのかもしれないと、私は納得して見ていた。逆に笑顔がすごく上手になったと自分の娘の成長した姿を見るようでうれしかったよ。
ドラマ自体は2時間でできる内容ではないので、案の定、駆け足なのだ。とくに主人公がどうやって接客技術を身につけたか、売れっ子になるまでに本人がどのように努力をして、回りの人がサポートをしたかがごっそり抜けている。これがフィクションならあまりにご都合主義の陳腐な話しになるところなのだが、そこはノンフィクションの強さだ。主人公がどういう人か我々は知っているし、知らなかった人もドラマの冒頭で本人が出てきてドキュメンタリー形式で説明があるので、視聴者はゴールがわかっている。よって、折り返し地点から主人公がどうやって走ったかはわからないが、とにかくゴールの瞬間を見ているので、物足りなさを感じることはあっても物語としてぎりぎり破綻を免れているわけだ。
また、スーちゃん演じるお母さんとどうやって和解するかをメインテーマに持ってきたことが、主人公のサクセスストーリーとしては描き足りない点をカバーしている。この親子和解テーマは、このお母さんならずとも水商売に対して眉をひそめるお茶の間の視聴者に対して、「スーちゃんが許して喜んだのなら私も良しとしよう」という効果があったのではないかな。
それにしても冒頭のちょいワル女子校生の演技はやはり北川景子の真骨頂。あれは若手女優の誰もかなわないと改めて確信した。よかったな、北川景子は本当に運が良い。やった、これでまた野望に一歩、近づいた