ブルーレイ

  娘「あれ、なにしてんの?」

  私「冬のボーナスでテレビを買うんだよ。やっと14インチのブラウン管ともおさらばさ」

  娘「ふーん」

  私「この上に置くからさ、長さを測ってんの」

  娘「どんなのを買うの?」

  私「電気屋で見たらやっぱ26インチは欲しいな」

  娘「へー、どのくらいの大きさ?」

  私「幅が68cmだからこのあたりまで来るな」

  娘「大きすぎるよ、そんな大きいのいらないって」

  私「なんでだよ、ずっと14インチで我慢してきたんだぞ。このくらいのを買おうよ」

  娘「そんな大きいのいらないよ。うちはあんまりテレビ見ないじゃん」

  私「うっ...うちは一家の団欒が無いからなあ」

  娘「17インチで十分じゃない?」

  私「それはあんまりだ。横が長いだけで高さがいまの14インチと変わらないじゃないか」

  娘「そのくらいでいいと思うけどな」

  私「おまえはなんでそう欲がないんだ。わしが子どもだったら40インチを要求するぞ」

  娘「そうかなあ」

  私「ひとつだけ忠告しておく。おまえはぜったいに経営者には向いてない」

  娘「じゃあ、どうするの?」

  私「20インチか22インチだ。それ以下は譲れん」

  娘「あれ、今度はなにを測ってんの?」

  私「ブルーレイレコーダーの置き場所だよ」

  娘「邪魔だよ、テレビに内蔵してあるやつを買おうよ」

  私「テレビを録画するならだんぜんハードディスクが便利だ。それだけなら内蔵型がある」

  娘「ならそれでいいじゃん」

  私「それだけだとDVDが見られないじゃないか。両方が付いてるテレビは無いんだよ」

  娘「DVDを見るときはパソコンで見るよ」

  私「おまえが一人で見るならな。みんなで見るときは茶の間に必要だろ」

  娘「うちは家族で映画を見たことなんか、ここ何年もないじゃん」

  私「うっ...おまえに言われると傷つくなあ」

  娘「ね、この20インチのハードディスク内蔵型のテレビだけにしよ」

  私「おまえの欲の無さはもはや罪深くさえあるぞ」

物欲のありすぎる子どもを持つと苦労をするが、無さ過ぎる子どもはそれはそれで寂しいものである