9月に読んだ本

日本の難点 (幻冬舎新書)

日本の難点 (幻冬舎新書)

社会学者の宮台真司による評論集。ちょうど選挙の時期に読んだので後期高齢者医療制度の問題とかタイムリーな話題が興味深かった。


アイデアの出し方

アイデアの出し方

広告代理店のクリエーターの人が書いたこの手の本を読むと、どの人も共通して主張していることは「アイデアとは無から有を生み出すことではなくて、すでにある物の新しい組み合わせを考えること」。それには膨大なとは言わないまでもそれなりの量の知識や情報が必要であると。これは同感である。日本の学校教育は詰め込み式なのはイカンと言われるが、小中学校くらいの知識は最低限の素養として詰め込んでおくべきである。


全脳思考

全脳思考

これもアイデアの出し方の本。ゴールに至ったときの受益者の満足を想像し、そこから逆に方法論を考えよということだったと思う。だいたい私がここに2、3行で要約できるのだったらこの分厚い本の存在価値がないからな*1


きつねのはなし (新潮文庫)

きつねのはなし (新潮文庫)

連作のようで連作でない短編集。ジャンルはホラーなのだろうが怖くはない、京都を舞台にした不思議な話。ふつう、不気味なこととか事件が起こって、その作品世界の中での合理性によって解決するでしょ。たとえば奇怪なことが起こる家があって、よくよく調べると過去にその家で殺人があったとか。これはどの作品も結局はなんだったのか最後までわからないのよ。ふつう、そんな話を読まされたら欲求不満になるでしょ。これは独特の雰囲気と物語を流れる寂寥感で、むしろ種明かしが野暮と思えるような気になる。なかなかの筆力の作者である。


バカミスじゃない!?―史上空前のバカミス・アンソロジー

バカミスじゃない!?―史上空前のバカミス・アンソロジー

こんな本、絶対に新刊では買わないよね。安かったから買ってみた。「バカミス」つまり「バカ ミステリー」というジャンルがあって、いろいろなパターンがある。あえて無茶な設定で話を作るとか、探偵役がものすごいバカとか、本格物に見せかけてくだらねえトリックをするとか。ただ、バカミスとはいいながらもそれぞれ一流の作家なのでどうしてどうして、なかなかしっかりした構成の佳作ばかり。十分に元は取れた。でも新刊では買わない方がいいよ。


角 (光文社文庫)

角 (光文社文庫)

主人公は出版社の校正部に勤めるOL。ある朝、目が覚めたら頭に角(つの)が生えていた。といっても一角獣のようなすごいやつじゃなくて、雷様の頭にあるような短いやつ。ここまでで物語の展開を正確に予想できた人は偉い。この角を使って悪い奴をやっつけるとか、角の研究をするためにこのOLを捕らえようとする政府の秘密機関から逃げ回るとか、音叉を鳴らすと鬼に変身して太鼓のばちで怪人をやっつけるとか、そういう展開にはならない。髪をあげて角を隠し今までどおりの生活を続ける。物語は出版社の日常とか、わがままな作家とのもめ事とか、主人公の恋とか...角はどうしたんだよ、角は。


黒本―平成怪談実録 (新潮文庫)

黒本―平成怪談実録 (新潮文庫)

うー、この作家にしてはつまらない。やはり実録物は「新耳袋」という金字塔があるからどうしても比べてしまって損だね。


算数の発想 人間関係から宇宙の謎まで (NHKブックス)

算数の発想 人間関係から宇宙の謎まで (NHKブックス)

未知数を決めて方程式を解くのが数学なら、問題のパターンごとに計算のしかたを考えるのが算数の文章題でしょ。私は大学生のときの家庭教師のバイトでいちばん苦労したのが小学生の算数だったよ。鶴亀算とか旅人算とか。だが、その考え方は応用がきいて経済学とか物理学にも使われているというのがこの本。魅力的なテーマだったんだが、難しい難しい。

*1:開き直ったな