「続・ファン道を極めたい」または「正しい回答とは」

人生に必要なことはすべて安座間美優が教えてくる*1。人生には必要ないけどファンとしての心得はすべて華子様が教えてくれる*2。私は「ファンはタレントが与える物だけを受け取れ」などと書いておきながら、私自身がファンとしてあってはいけない「奢り」という罠に陥っていた。あんな偉そうなことを書いた自分が恥ずかしい。自分の愚かさと心の狭さが情けない。
華子様がなにを思ったのかブログで質問を募集した。タレントのブログでよくやる質問コーナーだ。華子様はもう二度とやらないと思ってた。なぜなら

  去年12月の質問コーナーに寄せられた質問にぜんぶ回答してない...○| ̄L...

その状態でまた質問コーナーをやっても...だが華子様のファンは「前回は質問を書いたタイミングが遅すぎたので華子様が途中でお疲れになってしまったのだ。華子様も心を痛めているに違いない、本当に申し訳ないことをした。あのとき答えていただけなかった質問を今度はもっと早く書こう」とふつうに思っている。華子様の場合はファンの全員が納得しているので、これに納得できない人はファンを続けてないのでこれでいいのだ。だが、ほかのタレントだったらブログが炎上する可能性もあるくらいのとんでもない話だ。先日の5日間の空白問題、華子様はブログの読者に対してなんの不義理もない。よく読むと、華子様のお言葉の隅々までじっくり読むと華子様はなにも悪くないどころか、ファンに対して実に誠実にお優しい行動を取られている。この質問コーナーにもなにか読者が勝手に陥っている落とし穴があるのではないか。そこでもう一度ブログを読み返して気がついた。今回の質問の募集。

  すんごく久々に質問を受け付けようかな〜(^o^)/なんて思うんですが、どうですか〜?

  今日中にいただいた質問で答えられる範囲で♪

そうか、ここだ!...「答えられる範囲で」...去年の12月のブログを見てみる。

  私に質問ありませんか〜?なんでもいいよ(/\)\(^o^)/

  答えられる範囲で♪♪

やはりそうだ...「答えられる範囲で」...ここで華子様が言っている答えられる範囲とは、まだオープンにできない仕事とか、華子様が言いたくないことを指していると思ったのだが、むしろ内容より「量」を指していたのだ。もし内容を指しているなら「なんでもいいよ」に矛盾する。だが、量を指しているなら矛盾しない。つまり

  どんな質問にも答えるけど、飽きたら終わりね

と華子様は言っているのだ。どんな質問にもタレントが答えてくれるのなら、あまりに質問者が楽すぎる。タレントに厳しすぎる。ファンとタレントの間に緊張感がなさ過ぎる。それより「飽きたら終わり」というルールの元で行なうタレントとファンのゲーム。もちろん最後まで行ったらファンの勝ちだ。当然、前の人と同じ質問をしたら華子様が飽きる。また簡単な質問が続いても、答えにくい質問が続いても華子様が飽きる。ファンは質問を何種類か用意して、質問の流れを読みながら自分の質問を選ぶ。考えに考えても、コメントを書いてから反映されるまでの時間差があるので、その間にどういう質問が書かれているかは読み切れないブラックボックスになる。コメントが反映されたら前の人と同じだったということもあり得る。もちろんそこで終了。質問者はファン全員から「ボケ、おまえのせいだ」「オレの質問をどうしてくれる」とスパムメールの洗礼を受ける。華子様の質問コーナーは己の知力と運を賭けた命がけのゲームなのだ。
この質問と回答について、以前に読んだ本を紹介したい。残念ながら本はとっくに捨ててしまったので詳しい紹介をできないのが残念だが、筆者はミステリー作家であると同時に某大学で教鞭をとる教授だか准教授。この人が授業の終わりに紙を配り学生から質問を受け付ける。授業のことでもいいし、世間一般のことでもいい。私はこの本を読んで、それこそ目から鱗が落ちた。結論はこうだ。

  良い回答は、良い質問にしかできない

べつの言い方をすれば

  アホな質問には答えないのが、回答の品質を保つ方法である

この先生、質問の3分の1、分野によっては半分以上に答えないで、なぜその質問に答えられないかが書いてある。本が手元の無いので具体例を挙げられないのが本当に残念だ。代わりに私の例を紹介しよう。この本を読んだ直後の春、私の事業部に大量に新入社員が入ってきて、正式配属の前に、事業部内での1ヶ月の研修があった。1日が終わったら、その日にやったことや感想を課長以上に電子メールで送ることになった。そこに質問を書いたら、誰かが答えるというルールになったのだが、誰も答えないのでもっぱら私が回答者になった。目から鱗が落ちたあとの私、このような質問には答えず、質問が悪いことを指摘した。

  1.社会人としての心得でいちばん大事なことはなんですか?

  2.好きな言葉、座右の銘はなんですか?

  3.見栄えのするプレゼンを作るコツを教えてください

1は質問の射程が広すぎるのが問題である。これだけで本が1冊書けるくらい遠大なテーマだ。質問をした本人は「闘争心」とか「誠意」という言葉が返ってくることを期待したのだろうが、遅刻をしないことも大事だし、経費の精算をまちがわないことも大切だ。そこから一つを選び出した時点で、それは質問と回答ではなく、ただの井戸端会議になってしまう。
2は質問のように見えて質問ではない。なにか疑問があってその答えを聞くのが質問である。他人の好きな言葉とか座右の銘なんか疑問に持ちようがないはずだ。仮に他人の座右の銘を聞いたところでそれを自分も同じように感じ入って座右の銘にすることなどできない。それでも聞きたいというのは、単にその人に対する興味だけだ。だが、それを話すほど新入社員と親しくないから話す必要はない。
3は教えられなくもないが、新入社員に教えても役に立たないのだ。問題は見栄えより内容である。内容が良ければ見栄えがどんな悪くても人に感銘を与えることができる。それができる前に装飾を凝るのは時間の無駄である。
このように質問を吟味すると、芸能記者がする質問は9割が答えるに値しない質問なのがわかるだろう。質問として体を成していない質問、良くない質問にはそのまま答えず、まずはなにを聞きたいのか、なにを知りたいのか、場合によってはそれを聞いてあなたはどうするつもりなのかを確認した上で、正しい質問にだけ答えるのが名回答を連発するコツである。この真逆の立場にあるのが「生協の白石さん」だろう。あれは質問に答えるより、質問者が満足する話をしてあげる。あれはあれで名回答なのだが、ビジネスの場においてはめんどくさい。
華子様、華子様の質問コーナーで私はこんなことを考えました。華子様のファンでいたためにまた私はファンとして成長できました。でもファンとして成長できなくても、ファンに優しい小松彩夏沢井美優がちょっとうらやましい秋の夕暮れです...

*1:言及した日が多すぎて列挙しきれない

*2:http://d.hatena.ne.jp/M14/20090907