6月に読んだ本

いっぺんさん

いっぺんさん

この人は好きな作家なんだよ。初期の2作はバリバリのホラーだったのだが、突然に作風が変わって、ホラーで味付けをしたハートフルな短編をつぎつぎと出している。これもそうかと思ったら微妙に違う。途中までは「花まんま」と同じようなテイストで物語が進行するのだけど、ラストを後味の悪い方向に落とすという意外性。ちょっと待ってくれよ、主人公はなにも悪くないのになんでそうなるの?という話が多くて。この人、いったい何があったんだ?

ユージニア (角川文庫)

ユージニア (角川文庫)

初期の「木曜組曲」以来、この人がたびたび用いるおなじみのパターン。長編なんだけど、連作短編集の形を取っていて、各章ごとに事件にかかわったそれぞれの人の視点で語られる。第一章くらいでは何が起こったのかさえ読者はわからない。何章か話が進むとやっと事件の全貌が見えてきて、真相はなにかという読者の興味が起こってくる。最後から2番目くらいで犯人なり事件の中心人物のモノローグというパターン。最近、読んだ別の作家が同じパターンを取っていながら、この構造を逆手にとっていた。事件の中心になる人物が本名で語られたり、ニックネームで語られたりするのだが、読者は当然、これが同一人物だと思うようなミスディレクションがある。3分の2くらいのところでこれが別人だとわかり読者は自分の足場が崩れるような酩酊感を味わう


人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)

人くい鬼モーリス (ミステリーYA!)

青少年向けに書かれたミステリーのシリーズ。とはいってもそれぞれが一流の作家による気合いを入れた作品ばかりでなかなか読ませる。この作品は一匹の「人食い鬼」がいるという1点だけスーパーナチュラルな要素を入れて、その1点以外は合理性と論理性を守りながら話が進行する。こういう話の作り方もあるんだね


日本を変える「知」 (SYNODOS READINGS)

日本を変える「知」 (SYNODOS READINGS)

社会学者、経済学者によるこれからの日本の進路の提言集。肝心の「ではどうしたら?」という部分は弱いんだけど、そんな簡単な方法があるならとっくにやってるか。それぞれが現在の体制の批判だけに終わらせるのではなく、じっくり腰を据えた論評が気持ちいい


負の紋章

負の紋章

1年前くらいに古本屋で買って、なんでこの本を買ったのかまったく思い出せなくて放置していた本。なんだよ、もっと早く読めば良かった。娘を殺した犯人の復讐を計画するふつうの人。彼を助けるのは警察ヲタクの少女とか、ベビードール愛好家の大金持ちとか変な人たち。紆余曲折があって、最後の手段がアレか。それは無理だろう。でもおもしろかった



事件の真相!

事件の真相!

こういう時事ネタはリアルタイムに読まないとつまらないね


向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

この作家はぜったいにハズレの無い人だと思ったのだが、これはハズレだったよ。でも2作目なので、この後、グングン腕を上げて現在に至っているのだろう。この作品で不満なのが、推理小説において登場人物の会話でどこまでの嘘が許されるか。犯人の嘘を論理で崩し真相に迫るのは推理小説の醍醐味なんだが、登場人物がやたら嘘をついていては逆に面白さが半減する。この作品はそのギリギリのところで勝負をして、アンフェアというほどではないのだが、私としては好きになれなかった

こんなニュースが*1。たぶん事務所の扱いが不満だったのだろうが、それでもひとこと言いたい。

  5月以降にテレビ2本と映画1本。君は十分に売れてたじゃないか